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私の素敵な……婚約者……?

そうして、婚約者は訪れた。

私が階段から落下して五日後。

少し遅いなぁと思ったが、忙しかったのかもしれない。


日記にも、『彼は仕事が忙しいからなかなか会えない』って書かれていたものね。仕事が忙しいということは、できる男っていうこと!

やだ、私ったら見る目ある~~と調子に乗っていたから、バチが当たったのだろうか。


訪問した私の婚約者はちらりと私を見ると、ふんと鼻を鳴らした。


感じが悪いのだわ……。


顔はいい。顔はいいのだけど、雰囲気が良くない。受け付けない。


耽美な感じのお顔立ちに、上品さを感じる艶やかな黒い髪。長いまつ毛に縁取られた、薄青の瞳。

お人形なのかな?と思う程度にはとても整った顔立ちだと思う。


だけど、話し方とか、私を見る目とか、その全てが嫌な感じである。


そう、これは……あれだわ!

完全にこちらをばかにしきっている顔、とでも言うのだろうか。見下しているというか!足元を見ているというか!


どうして婚約者にこんな顔をされるのかがわからない。


戸惑っていると、彼が馬鹿にしたように笑って言った。


「なんだ、階段から転がり落ちたとか聞いたから来てみれば。元気じゃないか。どうせお前のことだ。無様に樽のように転がり落ちたんだろう?」


却下ーー!!!!

交代(チェンジ)で!!!!


交代(チェンジ)でお願いします!!!!


こんな男が私の婚約者とか、嫌なんですけど!

第一印象は大事だ。私は自分の勘を大切にしている。


このひと、絶対私を大切にしてくれない!!


ぬわぁ~~~にが【いつも優しくしてくれる】、よ!!

この態度のどこに優しさが混ざってんのよ!これなら解熱剤のがよっぽど優しいわよ!体にね!!


「た、樽」


よりによって繰り返したのはその単語。

いや確かに、樽みたいに転がり落ちましたけど~~~?

ものの見事に転がり落ちて、今でも家族には笑いの種にされますけど??


玄関ホールの階段。踊り場から一番下まで落下して、大きな怪我がなかったのも笑いを誘う一因なのだろう。悪運が強すぎる。


「シャーロット」


「は、はい」


名前を呼ばれて、条件反射のように返事をする。

目の前の男はとても偉そうである。何様だこいつ。

すでに私は目の前の男が嫌いである。


記憶を失う前の私へ。

どんな事情と経緯があって彼と婚約を結んだのかは分からないけど、こんな男が好きとかちょっと見る目が無さすぎると思います。

ドMだったの??


「先程、この家の従僕からお前に記憶が無いと聞いた」


「は、はぁ。そうですね。そうです」


こんな男が私の婚約者……。

その事実が衝撃的すぎてまともに受け答えすらままならない。阿呆のように言葉を繰り返す私を見て、また彼が馬鹿にするように鼻を鳴らした。


は、腹立つーーー!!!!


出禁よ!出禁!

今すぐ家から追い出してやりたい。蹴り出してやろうかしら。


そんなことを考えていると、目の前の男。

名前は確かジュリアン。ジュリアンが言った。


「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」


そして、冒頭へと繋がるのである。

私はわなわなと震えていた。

屈辱、だからではない。いや屈辱ではある。


あるのだけど、過去の私に言ってやりたいことが山ほどありすぎて。それで震えている。


私、男を見る目がなかったのかしら!?


この婚約も、私からせがんで整えてもらったもの……ですって!?

ほかの女へのプレゼントの請求書を叩きつけてくるような、男を!?私は好きだったの……!?


衝撃的すぎて、言葉も出ない。

とりあえず今日のところはジュリアンにおかえりいただきたい。出口はあちらです。


問答無用で私は呼び鈴を鳴らし従僕を呼ぶと、彼を帰らせた。ジュリアンは「僕にこんな態度をとって……後悔するぞ!」と脅しのようなことを口にしていた。

しかし従僕に背を押されて退室するさまは、負け犬の遠吠えにしか見えず。


とても、とても。情けないのである……。


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毒を飲めと言われたので飲みました。
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