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15話 神速のライトウェイトスポーツ

話がかみ合わないなと思っていたらタイムアタックのタイムを間違えていたので、前回と今回の分を修正しました。


申し訳ありませんでした。

 悩む3人に対して、佳奈がひとり口を開いた。


「ええっと……、じゃあ排気量だけでも合わせてみる?」

「「「えっ?」」」


 佳奈のその提案に、3人は思わず聞き返した。


「どういうこと? 合わせるって……」

「……こーさんが、わたしのCBX250Sに乗ってアタックする。ということ」

「僕が、佳奈さんのCBXに?」


 晧一が聞き返す。すなわち、自分のCBX125Fの代わりに佳奈のCBX250Sを借りて、明日城ヶ崎のZX-25Rとタイムアタック勝負をするということ。確かに、これなら排気量は250ccで同一。ハンディキャップも少なくなる。


「でも、それだと佳奈のバイクが……」

「大丈夫だよ櫻子ちゃん。こーさんの運転を見て思ったんだ。……すごく速かった」


 佳奈がそう褒めてくる。だが、佳奈にとっては自分のバイクを他人に貸すということになる。

 一般的に、他人に物を貸すという行為はリスクがある。だが佳奈はそんなこと知ったこっちゃないといった感じで話を続ける。


「……それに、わたしのCBX250SはこーさんのCBX125Fとエンジン以外はほぼ共通だから、乗り味は似てるんじゃないかな? だから、早く慣れると思うし……」


 いつもの静かでゆっくりとした口調だが、目は嘘をついていなかった。


「……じゃあ、一回だけ走ってみるよ。ありがとう、佳奈さん」

「ん、はい。鍵だよ。……そうだ、代わりと言ってはなんだけど、こーさんのCBX125Fに乗ってもいいかな?」

「あぁ、うん、いいよ。じゃあ、乗せさせてもらいますね」


 佳奈が晧一のCBX125Fに、晧一が佳奈のCBX250Sに乗る。


「……じゃあ、Uターン地点で待ってるから。頑張ってね、こーさん」

「あぁ、はい」


 去っていく佳奈にそう返し、晧一はCBX250Sのエンジンをかけた。


『……変な感じ。なんか、いつもと違う。エンジンが、すごい元気だ』


 CBX250Sは、CBX125Fと比べてエンジンが大きいので、振動がかなり大きい。そのうえマシンが軽く、振動以外はCBX125Fとほとんど同じだ。

 しばらくエンジンを温めていると、瞬がOKサインを出す。タイムアタックの準備ができたようだ。


「じゃあ、カウント行くよ!10秒前! 9、8……」


 瞬がスタートのカウントダウンを始めた。そして2から1へ変わる瞬間に7000回転をキープ、発進に備える。そして1回目と同じように、SR400の櫻子が晧一の走りを観察する。


「ゴー!」


 瞬の腕が振り下ろされたと同時にクラッチミート。CBX125FよりもトルクのあるCBX250Sは、半クラッチを長くしなくてもすぐにつながる。クラッチを完全につなぎ、すぐに1速から2速にシフトアップ、そしてフルスロットル。

 この時点ですでにトルクの出方がCBX125Fと違うのが分かる。125ccで慣れていた晧一は少し戸惑うが、すぐに順応してCBX250Sを操ってみせる。それ以上に、低回転に比較的強いSOHCの単気筒エンジンが、車両重量わずか127kgの軽量ボディを力強く押し上げてくる。


『これが、250cc単気筒のトルクか……。すごい』


 そんなことを思いながら、晧一は白城峠をアタックする。コーナー速度こそ変わらないが、立ち上がりからの加速が明らかに上昇したのを感じる。

 右コーナー、左コーナー、S字。そして最大の泣き所だった高速コーナーと直線。

 平均速度は1回目のタイムアタックの時よりも明らかに速い。だが、問題はUターンして上り主体へと切り替わる後半セクション。CBX125Fの時はここで失速したが、果たしてCBX250Sではどうだろうか。

 緩い下りの右コーナーを抜けた先がUターン地点。そこで佳奈が手を振っているのが目印だ。

 そして、佳奈の前で減速、リアブレーキを残しつつ視点を曲がる方向へ向け、半クラッチをしながら転倒しない程度のバンクでUターン。セパレートハンドルのバイクは転回の難易度がバーハンドルのバイクと比べて高いのだが、晧一の運転からはそれを感じさせない。


 Uターンを終えて、CBX250Sが再び加速していき、コーナーの先へと消えていく。それと同時に、観察係の櫻子が晧一とすれ違って出てきた。


「むー。櫻子ちゃーん、遅れてるよぉ」

「分かってるよ佳奈! 晧一くんって、意外と命知らずなんだから……!」

「がんばー」


 聞こえているか聞こえていないか怪しいところだが、そんなやり取りをしながら櫻子は愛車のSR400をUターンさせた。


 Uターンからの後半セクション。さっきも言った通り、ここからはCBX125Fの泣き所だった上り坂主体のセクションだ。

 だが、CBX250Sは上りのコーナーでも3速から加速できる。やはり2倍の排気量の差は大きい。

 直線でも楽に時速100キロを出せて、そこからもまだ加速していけそうなパワー。だがこのバイクは借りものなので、そう無茶なことはできない。センターラインを割らず、イン側に巻かずアウト側に膨らまず、不安定な場所は走らず、確実にコーナーを曲がるしかない。

 下手にバンクはさせないものの、しっかりと前後タイヤをグリップさせてコーナーをクリアしていく。

 タイヤが少し古いからか若干流される感覚があるが、破綻するほどじゃない。限界を迎える一歩二歩手前でバイクを操る。

 タイヤの限界を知れれば、安心して攻めることができる。そう考えた晧一は、少しスピードを上げてコーナーに入っていく。

 段差舗装、枯葉、砂利、アスファルトの陥没に割れ。転倒の原因となる要素を避けつつ、限界までCBX250Sを操る。

 帰りの直線で時速120キロに到達。そこからヘアピンへ向けてブレーキング。

 シングルディスクだが、車体が軽量なのでよく止まる。むしろジャックナイフしてしまうのではないかと思うくらいだ。

 下りから上りに切り替わるヘアピンを抜けて左コーナーをクリアすれば、あとは段差舗装ありの3連続ヘアピン。その先の、瞬の待つ駐車場がゴールだ。


『よし、あと少しだ。……油断すんなよ、僕』


 そう自分に言い聞かせ、アクセルをさらに開ける。そして、最後の左ヘアピンをクリアして、下りながらのファイナルストレッチ。フルスロットルからの超高速シフトアップ。CBX250Sのエンジンがさらに咆える。


「……あ、見えた!」


 晧一の乗るCBX250Sのヘッドライトを確認した瞬が、携帯アプリのストップウォッチを止める準備をする。高回転型単気筒の音が、徐々に近づいてきた。

 そして全開のCBX250Sが瞬の真横を通ったとき、瞬がストップウォッチを止めた。

 遅れること1分、ようやく櫻子が戻ってきた。すでに晧一はCBX250Sを駐車場に止め、降りて待っていた。


「やっと来たね、櫻子ちゃん」

「はぁ……。もう、この峠、凸凹しているし荒れているしで走りにくいのに、晧一くんはよく走れるよね。……逆に引いちゃうくらい」

「うん。本当に晧一クンってうまいよね。もしかしたらレーサーとかに向いてるんじゃないかなぁ?」

「あーありかもね! ふふん、もし晧一くんがレーサーになったら、あたしがレースクイーンにでもなっちゃおうかな?」

「いいね! 櫻子ちゃんみたいなモデル体型の女の子はレースクイーンにぴったりだよ!」

「冗談のつもりで言ったんだけど……。ま、まぁ、ありがとね!」


 そんな会話をしていると、佳奈がCBX125Fに乗って戻ってきた。


「おっ、佳奈ちゃんも戻ってきたね。……じゃあ早速だけど、タイムを発表しようか」


 瞬がその場を仕切り、タイムを読み上げていく。


「先ほどのタイム……」

「……」「……ゴクリ」「ふあぁ、ねむねむ……」


 無駄に瞬は先延ばしにしてくる。テレビで言うところの、ここから先はCMの後で、みたいな感じだ。


「……を、発表します」


 まだ伸ばすか、とはさすがに突っ込めないが。


「……タイム、6分19秒996」

「ええっ!? に、20秒を切った!? 晧一くんすごい!」

「ふあぁ……。なんだってぇ……?」

「……6分19秒? 僕が……?」


 佳奈はいつも通りあくびをしてぐーたらしているが、櫻子はそのタイムに驚き、アタックした本人の晧一は半信半疑だった。だが、瞬の口から出たタイムが、城ヶ崎のベストタイムである4分4秒を切っていたのだけは確かだった。


「これなら、きっとあのクズ城ヶ崎に勝てるよ。これで行くかい? 晧一クン」

「あー、うーん……。僕はいいんだけど、ただ……、佳奈さんのバイクを借りてバトルちゃっていいのかなって思ってるから……。転ぶリスクもないわけじゃないし」


 ちらりと佳奈のいる方を見る。佳奈は、眠たそうな目を擦りながらこう言った。


「うぅ……。あぁ、わたしはだいじょぶだよ? だってあの金髪、ムカつくんだもん。思いっきり成敗しちゃってあげて、こーさん」

「はぁ……わ、分かりました」


 晧一は乗り気ではないが、あの城ヶ崎を負かせられるのならそれでよかった。125ccはバイクじゃない? ふざけるな。


「じゃあ、決まりだね。アイツは明日の1時に来いって言ってたから、忘れないでよね?」

「分かってるよ瞬。じゃあ佳奈さん、明日はバイク、お願いします」

「ん、りょーだよ」


 こうして、明日の城ヶ崎とのバトルが決まった。


「ふあぁ、ねむい……。わたしは帰る……」

「佳奈ぁ? はぁまったく……。じゃあ、明日はあたしが無理やりにでも佳奈を起こして連れてくるから」

「頼んだよ! 櫻子ちゃん!」

「お願いします」

「よし。じゃあ……、このあとはなにもないよね? うん、帰ろっか。もう5時になっちゃったしね」

「そうだね」「うん……」「帰って家でゆっくりしよぉ……」


 4人はそう言って、各々のバイクに跨ってエンジンをかけ、駐車場を後にした。

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