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1話 上げて落とされて

 4月の終わり。春が終わろうとしていた。桜は完全に緑に染まり、セミが鳴き始める季節。

 そんな気持ちのいいハレの日、九州のとある大学、「東城学院大学とうじょうがくいんだいがく」では入学式が終わり、数回のオリエンテーションを経て、講義が行われていた。

 そこにはさっそくぼっち大学生がいた。彼の名前は「最上晧一(もがみこういち)」。

 彼は自動車やバイクの修理、販売などをやっている「最上整備店」の息子である。しかし晧一はそのあとを継ぐか悩み、その悩む時間が欲しいとこの大学に入学し実家から少し離れた場所に引っ越した。……はいいものの。


「……あー。これ絶対大学デビュー失敗したわ……」


 あたりに広がる仲間の輪を見て、晧一はひとり頬杖をついてため息をつく。

 もとから人と関わることが苦手な晧一は、小学校、中学校、高校と友達は少なかった。父親の仕事柄、クルマやバイクなどが好きでそれが趣味であると言ってきたのだが、この時代クルマやバイクなんかが好きなヤツがいるわけもなく。さらには趣味がバイクであることを言ってしまったがために暴走族かヤクザの息子か何かだと勘違いされ、他人から距離を置かれる始末。


『あぁ……、せめて流行りに乗ってアニメとかゲームとかしておけばよかったかなぁ。……でも、僕に合うアニメやゲームはなかった。……あー、せめてバイク仲間とかいないかなぁ』

 

 過度な期待をしていたのがいけなかったのかもしれない。憧れていたキャンパスライフなんて、自分には似合わない。

 結局今日もほとんど人と関わることなく講義は終わってしまった。

 晧一はひとり、大学の講堂からとぼとぼと出ていく。新歓で声をかけまくる部長らしき人、イケてる仲間たちにかわいい女の子、そしてリア充。とても楽しそうにしている学生が嫌でも目に入ってくる。


「はぁ……」

 

 そんな学生たちを見て大きなため息をつき、バイク駐車場へと向かう。

 ガラガラの『経営学部学生用バイク駐輪場』に、たった一台黒と赤のツートンカラーのバイクがある。

 『HONDA CBX125F』。市場には多く出回っておらず、人気があるわけではないものの、125ccながらDOHC4バルブの単気筒エンジンは12000回転までキッチリ回せて、最高出力17馬力をひねり出す。車両重量は117キロ、PWR(パワーウエイトレシオ)の値は125cc以下のバイクで最小。「原付二種最速」とも言われる、隠れた原付二種の旧車(?)である。

 晧一曰く「安くて燃費もいいし、速くてカッコいいから買った」という。


「……誰もいない。あーチクショウ」

 

 晧一はわざとらしくそう叫ぶと、ポケットからキーを取り出し、ヘルメットホルダーを解除する。


「あのー、そこのバイク乗りの方?」

 

 後ろから突然声をかけられ、晧一は振り返る。そこには髪を一部だけ金に染めた男がチラシのようなものを持って立っていた。


「え? あ、はい。そうですけど」

「あぁ!よかったー!」


 男はにっこり笑うと晧一に駆け寄ってきた。


「実は俺、『バイク同好会』っていうのの部長やってるんだけどさぁ、よかったら入ら……」

 

 男はそう言いかけると晧一のCBX125Fを見る。「原付二種です」と大胆に主張するピンク色のナンバーと三角マーク。今となっては珍しい存在ではないが、1980年代当時では「中型免許があるなら400ccに乗る」だの「ピンクナンバーなんてダサくて付けられない」だのと言った声が上がり、イマイチな人気だったCBX125F。


「あっ……」


 部長と思わしき男はバイク同好会のチラシを差し出そうとする手を引っ込めた。


「ええっと、言いにくいんだけど……。実はうち、125cc以下の二輪はバイクって認めてないからさぁ……」


 部長を自称する男は気まずそうだがはっきりとそう晧一に告げた。


「……は?」

「だってェ……、高速乗れないじゃん。それに遅いし……」

 

 晧一は唖然とした。

 せっかくバイク仲間ができると思ったのにこんな仕打ちはないだろう。

 そう叫びたかったが、晧一は言葉が出なかった。


「ごめんね?」

「ア、イエ……、大丈夫デス。ハイ……」

 

 晧一の日本語は崩壊しかけていた。

 男はじゃあとだけ言ってそそくさとその場を離れていった。

 取り残された晧一は、しばらく呆然としたあと、がっくりと肩を落とす。


「あぁ……、最悪だ……」


 せっかく入学したのに結局ぼっちな大学生活かよ……。

 そう落胆しながらヘルメットのシールドに反射する自分の顔を見る。それはそれはひどい顔だった。

二番煎じですが日常ものを書きたくなったので書いてみました

バイクものを書くのは初めてですが、どうか温かい目で見守ってください

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