4:旅ってか、水着の準備②
アニタさんが持ってきてくれたのは、三人のマイカラーのビーチサンダルとラッシュガードとパレオにもなりそうなスカーフだった。
ダンはスカーフを見て「おんなのやつだろ! やだ!」とそっぽを向いていた。アニタさんはそれにも悶えて、可愛い可愛いと言いながら、ダンの頭をわしわしと撫でていた。
「ダンちゃんは、サングラスにしたら?」
「ちゃんいうな! サングラスは、ほしい! ルヴィ、かっていい?」
「いいわよ」
水色縁のサングラスを掛けて、辺りを見回しているダンがなんだか可愛くて、私もついつい撫でてしまった。
「しょこらは、すかーふほしい! ひらひらかわいい!」
「いーよ。ピンクでいいの?」
「うん!」
ピンク色のスカーフを持ってキャッキャと喜ぶショコラ、尊い。
フォンは、長袖のラッシュガードが気に入ったらしく、ウィルが持っていた買い物カゴに入れていいか聞いていた。
「水着は同じもの、ビーサンは色違いでいい?」
「「うん!」」
三人が着たところを想像すると、絶対に可愛いな……となってニコニコしていたら、アニタさんがなぜか床に這いつくばっていた。
「え?」
「想像したら、腰が抜けたわ……私のことは気にせず、買い物を続けて…………」
「え、うん」
とりあえず、アニタさんは放置することにして、私の水着を選ぶため、女性用のコーナーに移動した。
何にしよう。前世では着る勇気がなかったというか、着るチャンスさえもなかったビキニ。ちょっと着てみたくはあるけど、アレって泳げるものなのかな?
波に持っていかれそうな気がするんだけど。そもそも、ビキニを着てガッツリ泳ごうと思う人はいないのかもしれない問題がある。
「ウィルはどう思う?」
「まぁ、俺たちは魔法があるからな……泳いでるヤツはいそうだが」
「なるほど」
いざというときは、ウィルに任せよう。適材適所というやつだ。他力本願上等精神でいこう。
背中のパタパタあるから、肩紐とか背中部分が邪魔しないやつがいいのよね。普段は服の中に仕舞ってるけど、時々勝手にパタパタ動いてて、なんとなく窮屈なのよね。
まぁ、私の機嫌で動くんだから、勝手ではないんだけど。無意識ではあるのよね。不思議。
「あ、これ可愛い」
ビキニのホルターネックタイプで、ネックレスのようになっている部分にチューブトップが前だけくっついていて、谷間のところにスリットが入っているデザインだった。胸が程よく隠れているし、ワインレッドで落ち着いた色だし、シースルーのパレオも付いていた。
「どう?」
体にあててウィルに見せると、真顔のままで停止していた。
「ウィル?」
「…………あ、ああ。いいんじゃないか?」
「えー? 違うのがいいならはっきり言ってよぉ」
反応があまりにも薄いので、好きじゃなかったのかと思い売り場に戻そうとしたら、手首をガシッと掴まれた。
「え、なに?」
「あ……いや…………買わないのか?」
「見とれてたってハッキリ言わないと、ミネルヴァちゃんには伝わりませんよ、魔王様!」
いつの間にか復活していたアニタさんが、ウィルの横でニヤニヤしながら、わりかし大きな声でそんなことを言うものだから、ウィルがアニタさんの顔面を鷲掴みして、床にドゴッと沈めていた。
いくら頑丈さが取り柄の鬼人と言えど――とあせったけど、店長さんが爆笑してるから、たぶん大丈夫なのだろう。





