81:雑炊とは、万能である。
ふと時計を見ると、夕方ちょっと手前。
そろそろお腹がすいたような、すいていないような?
いやすいたかな?
「何食べたい?」
「なんでもいい」
「ですよねー」
私もなんでもいいから聞いたけど、そりゃそうだと納得。
そんなにお腹へってないもんなぁ。多分魔王も。
ペペロンチーノ、前世で言うと三人前くらいは食べてたし。
「楽で軽いものがいいよねー」
消化にいいもの…………雑炊食べたい。
「よし、雑炊」
「ぞーすい?」
雑炊を知らんのか! 魔王よ!
雑炊の色んな意味での美味しさを滾々と説明した。
具材は大概なにを入れても失敗せず、下味もどんなものでも――といっても和風・中華・洋風、ワンチャンでアジアンテイストかな?
海鮮も美味しければ、豚肉・鶏肉・牛肉・ミンチ・キノコや野菜だけでも良い。
たまねぎ、もやし、白菜、キャベツ、人参、ニラ、こんにゃくだって入れても大丈夫! あ、こんにゃく食べたいな。こんにゃくってこの世界にないよね?
話がズレたね。とにかく、本当に有能な料理だと思うのよ。
大切なのは、汁があること、米が入っていること、溶き卵はふんわりで! この三つ!
何味だろうと私は、あの子を『雑炊』と呼ぶ。私はっ!
「話が長い」
酷くね? 普通に酷くね? こんだけ美味しいものだって言ってるのに。
「いや、味が美味しいというよりは、貯蔵庫の余っている食材の処理的に美味しいって話だよな?」
「……そうとも言う」
「そうとしか言わん」
「チッ!」
令嬢が舌打ちするなと怒られた。反論は出来ない。
「チッ!」
「ったく。で、だ」
「ん? なに?」
魔王が開いていたバインダーをパタンと閉じた。何かの資料を読んでいたらしい。
ちょっと聞きたいことがあると言われた。
「ルヴィの言う『この世界』は、魔界の意味じゃないよな?」
「………………ん?」
にこっと笑って首を傾げた。でもだめだった。
「お前の妹が、本物のミネルヴァはたぶんお茶会の時に死んでいると言っていた」
「ほぁぁぁ!? いや、死んでない死んでない!」
「大丈夫だ、分かっている。何があってもお前を守るから」
「…………」
「おい、なんでそんな目のすわったキツネみたいな顔になる」
チベットスナギツネみたいなのがこの世界にもいるのかね? というか、おおよそ恋人であろう超美人で、超お淑やかなご令嬢に、『お前チベスナそっくしー! 笑』とか言うんか。
「いや、チベスナが何かは分からないが、そこまでは言ってない」
「言ったし! あーあー、もぉ怒った! 雑炊は私の好きな具材にするもーん!」
「怒りが小さいな?」
魔王が仕方なさそうに笑いながらお茶を飲む姿は、何故か老人みを感じた。
「――――おい、口に出てるぞ」
「てへっ!」
「可愛くない」
――――ちょ、泣くよ!?
んでは、夕方にぃ





