74:矯正力かしら?
集まりかけていた重鎮たちが、なぜか!散り散りになったものの、国王陛下が困り顔のままで居残った。
いや、居残ったってのも失礼かとは思うけれど。
なんとなく声をかけてあげないと可哀想な気がした。
いや、まぁ、それも大概失礼だろうけども。
「陛下、どうされました?」
「いや、王太子妃のそのような姿を見るのは初めてでな。ふわふわした娘かと思っていたが」
ふわふわしてるのは間違いない気がするけど、確かに。あの場で一喝するとは思ってもみなかった。
確かに! と同意していると、ヒロイン(妹)が恥ずかしそうに俯いて焦っていた。
「だっ……だって、あんな風に言葉遊びで国民の皆さまの安全を脅かすなんて、絶対に駄目ですもの。王太子殿下が常日頃から言われている事ですわ」
「っ! シセルっ!」
王太子殿下が感極まった様子でヒロイン(妹)に顎クイッからの頬にキスをしていた。ヒロイン(妹)は、「ヤダ、こんなところで!」とか頬を染めて照れているのを見て、ふとコミックでのワンシーンを思い出した。
なんやかんやで、あのコミックの内容からちょいちょいズレてるけど、やっぱり似たような事はこの世界で起こっているのよね。今のもかなりの既視感。ってか、なんか近い話を読んだ気がするなぁ。
矯正力とかあるのかしらね?
「いやぁ、ほんとシセルって可愛いわよねぇ」
「……何を企んでいる」
普通に褒めたのに、なぜか王太子に疑われる私。
ミネルヴァの株ってほんと低いわよね。まぁ、あれだけの事をしていればそりゃそうなんだけど。
「べつにぃ。妹の可愛さに悶えてるだけよ?」
「信用できるか!」
「いやぁ、王太子殿下に信用とか、ミリもされなくてもいいんですけどね」
「お前、本当に性格が悪いな!」
「知ってますぅ」
ほんと見てる分には良かったけど、王太子と反りが合わないわぁ。
このいかにも光属性の見た目な王子様感。ヤンデレ気質のくせに。
「お姉様たち、本当は仲いいですよね?」
「仲良くてたまるか!」
「いや、無理でしょ。キモいわ」
「「……」」
ヒロイン(妹)のツッコミに対しての私たちの返事が、あまりにも酷かったせいなのか、場がシーンとなってしまった。しかも魔王がなんだかいじけたような雰囲気を薄らっと醸してるし。傍目には全くわからないけども。なーんかそんな感じがする。
そそっと魔王と腕を組んでみる。
普通にエスコートスタイルにしようとしたら、グイッガチッと素早く動かれて、指を絡めた恋人繋ぎにされてしまった。
「私が仲良くしたいのは、魔王だけよ」
チラッと魔王の顔を見て小声で伝えたら、一瞬ほにゃっとした笑顔が見えた。
「…………フッ」
そして直後には、魔王がなぜか王太子にドヤ顔をしていた。
王太子はなぜかちょっと頬を染めていた。
――――何してんのこの人たち?
ではでは、お昼にー。





