73:魔王の努力。
王太子のツッコミにうんうんと納得していたら、王太子がズイッと前に歩み出て来た。
ちょっと圧が凄いなと思って後退りしようとしたら、目の前が急に真っ黒と銀色に。
――――魔王のマントと髪?
王太子と私の間に魔王が入り込み、何やらモソモソと話しているけれど良く聞こえない。魔王、いっつも低い声でモソモソ話すよね。ハキッと話してくんないかな?
「ちょ、見えないし、聞こえないって!」
バシバシと魔王背中を叩いていたら「ハァ……」とどでかい溜め息を吐かれてしまった。
「ルヴィに危害を加えたら、協定の破棄をちらつかせて脅していただけだ」
「脅しがえぐぅ!」
「効果的だろうが」
「いや、過剰防衛というか、過剰牽制というか……ナシナシ!」
魔王がふむ、と顎に手を当てて考えているうちに蟹歩きで魔王の横に移動。
魔王の顔を見ていると、何やら思いついたらしく、口の端がクイッと上がった。顔がすっごくあくどい。
「では、魔石補給を倍額とする。今から」
「「今から!?」」
国王陛下をはじめとした重鎮たちであろうおじさま方が、急に駆け寄ってきた。みんな聞き耳立てていたらしい。まぁ、貴族あるあるだよね。
「ややややれるものなら――――」
「王太子殿下、お戯れもそこまでに! 魔王陛下も!」
ポヤポヤヒロイン(妹)がまさかの一喝。しかも腰に手を当てて仁王立ち。
「冗談で言っていいことと、悪いことがございます!」
「いや、ほんき――――」
「魔王陛下っ! お姉様のお顔をご覧になってください。とても悲しんでますわよ」
――――え? 私の顔?
ザザッとみんなが私を見る。え、そういう注目の仕方、やめてくれないかなぁ? そして魔王の怪訝そうな顔が地味にモヤッとするんだけど?
「コイツ……『あー、めんどくさ』しか考えてなさそうだが?」
「「……」」
なんでそう正解を出すかなぁ? 普通に取り繕ってくれても良くない? 本当に『心底めんどくさ!』しか思ってなかったとしても!
「おほほほほ、そんなことないわよ。ないったら、ないわよ。ね? 魔王――――――――?」
「――――ん、ナイ。トテモカナシンデイル。オレガワルカッタ」
「「…………」」
めっちゃくちゃ棒読み! 下手くそか!
魔王の努力のかいがあり、どうにかこうにか丸くおさまった。
と、思う。多分。
魔王が頑張って演技したおかげで、なんでかみんなサッと散っていったから。
ではでは、また明日〜





