表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻 10/10発売☆】魔王様の餌付けに成功しました ~魔界の定食屋で悪役令嬢が魔族の胃袋を掴みます~  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/171

62:臆病で馬鹿な魔王。

 



 ◆◆◆◆◆




 執務室が臭い。

 誰のせいかというと、ここにいるはずがないルヴィのせい。

 フォン・ダン・ショコラが執務室の隅で尻尾を股に挟んで震えている。


「ちょっと? それ、どっちを怖がってるのよ? 答えによっては、オニオン汁ボム投げつけるわよ?」

「「キュウゥゥゥン」」

「ルヴィ、フォン・ダン・ショコラに八つ当たりするな」


 ――――ベシャッ。


 無言でまた玉ねぎをすりおろしたものを詰め込んだ『ボム』とかいうものを投げつけられた。

 臭すぎる。あと、目に染みる。


 ルヴィは人間界の自宅に送り届けたはずだ。

 国王やルヴィの妹と話し合い、人間は人間界で暮らす方が幸せだろうという結論に至った。

 

「バーカ! 魔王のバーカ!」


 ルヴィが涙目でずっと『馬鹿』と叫んでいる。

 知っている。

 俺は、馬鹿だ。

 

「なぜ、戻ってきた」

「っ!」


 ルヴィが目を一際大きく開き、ボタボタと涙を流し始めた。

 小さく嗚咽を出しながらも、必死に何かを言おうとしていた。


 今すぐ駆け寄って、抱きしめたい。

 だが……出来ない。

 ルヴィを愛したから、出来ない。


 人間たちに言われた言葉が脳内をぐるぐると巡る。

 ルヴィに確認する勇気がない。

 愛しているから、出来ない。


 俺は、なんて臆病なんだろうか。




 ◇◇◇◇◇




 魔王の言葉が心臓を抉る。

 魔王が『なぜ、戻ってきた』かと言った。それは、魔王は帰ってきて欲しくなかったからなのかな?

 私が帰る場所はここにしかないのに。


「っ! わ……たし…………は、ま…………っ、まお………………なんで?」


 私は、魔界で生きるって決めてるのに。

 魔王と恋人だと思ってたのに、なんで?


 なんで、こんなことになってるの?

 なんで、魔王は私の家で一緒に暮らしたの?

 なんで、あんな風に抱きしめたりキスしたりしたの?

 なんで?


 涙がボタボタ落ちてくる。

 前世でも今世でも、こんなに泣いたことなんてない。

 だから、きっと玉ねぎの汁のせい。きっとそう。

 

「……帰る」

「ルヴィ?」

「私は魔界で生きるって決めてる。魔王なんて知らない。私は私の家で私とフォン・ダン・ショコラだけで暮らすもん。魔王なんていらない」

「っ……あぁ。好きにしたらいい」

「家に鍵が掛かってて入れない。送って!」


 魔王がなぜか目を見開いて、仕方なさそうに笑った。

 なんで、今そうやって笑うの!?




 瞬間移動で自宅に送り届けてもらった。

 他人を運ぶ時は抱きしめないと出来ないのかな?

 なんで、抱きしめられてるの?

 

「玉ねぎ臭い。離して」

「ん」


 魔王が寂しそうに笑った。


「指輪」

「ん?」

「フォン・ダン・ショコラの指輪ちょうだい」


 魔王からちょっと離れて、右手をズイッと突き出した。

 あの指輪はもらったんだもん。もう私のものなんだもん。


「条件がある」

「何?」

「店に食べに来たい。お前の飯が食いたい」


 こんなふうに裏切られて、突き放されたのに。そう言われて嬉しく思ってしまう。

 だから、ムカつく。だから、嫌い。

 

「勝手にすれば!? 馬鹿魔王! だいっきらいよ!」

「ん――――」


 魔王が泣きそうな顔で微笑んで、私の左頬をそっと撫でた。

 ゆっくりと近付いてくる魔王の顔を、グーパンで殴った。


「大嫌いって言った!」

「ん。ずっと嫌っていてくれ」


 魔王が嬉しそうに笑って、瞬間移動で消えてった。

 

「…………え? ドMなの?」

「「ワフォォ?」」


 色々な衝撃で、涙が引っ込んだ。

 



ではお昼に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 10/10発売! ◇◆◇


魔王様の餌付けに成功しました ~魔界の定食屋で悪役令嬢が魔族の胃袋を掴みます~ 2
書籍表紙


表紙&挿絵は『犬月煙』先生っ!
2巻の表紙もきゃーわゆいのっ!そして、フォン・ダン・ショコラたちのあのシーンやあのシーンががががが!めちゃくちゃヨダレ出るからね!!!

※書籍化に伴い、タイトル・内容・キャラクターなど、大きく変更しております。

♣ ネトコン12受賞 ♣
双葉社Mノベルスf様より、2巻は電子のみでの発売です。
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

販売店舗一例としてリンクボタンを置いておきます。


▷▶▷ 双葉社

▷▶▷ amazon

▷▶▷ honto

▷▶▷ シーモア

― 新着の感想 ―
[一言] な…なんか目から汁が…(;_;) なんとかしろ、魔王〜ヽ(`Д´)ノ 正座待機です(・v・)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ