38:かき氷と幸せな夢?
おじいちゃんが小手鍋を持って走り去った直後、常連のジュリーさんとシモーヌさんが来た。
彼女たちはサキュバスな下着屋さんを開いている。
こう……攻めに攻めたセクシー下着らしい。ちょっと気になっているけど、見せる相手がいない問題。
「あら? いい匂いねぇ」
「新商品なんです」
「へぇ、今度食べてみよ。いつもの!」
「はーい。シモーヌさんは?」
「んー今日はレモンにしようかなぁ」
ジュリーさんは毎回必ずメロンかき氷。
メロンの柔らかくて染み渡るような甘さが大好きらしい。
おじいちゃんが作ってくれた魔具でショリショリショリと氷を削ってドーム型にする。その上にそれぞれのシロップをたっぷりとかけて、クリームチーズホイップこれでもかととろーり。
メロンはてっぺんに一センチ角のコンポートを乗せる。
レモンは輪切りのはちみつレモンを三枚扇型にして刺す。
「はい、おまたせしました」
渡した瞬間の二人の笑顔はいつも幼い少女のように輝いている。美味しいものを目の前にすると若返るのよねぇ! と笑っていた。
「あぁぁんっ。このクリームとの相性ぉ、ほんとすっっっごいぃ!」
「ちょっと、魔力漏れてるわよっ!」
「ぁんっ、危ない危ないっ。ってジュリーも漏れてるぅ」
「あははは! やぁぁだぁぁ!」
サキュバスは男性を惑わす魅了という能力が魔力に標準装備されているらしい。
男性がその場にいるとなんやかんやで大変なことになるのだとか。
私にはちょっとセクシーめの服を着たお姉さん二人が、楽しそうにキャッキャと笑いあっているだけにしか見えないけど。
「まーたお前らかぁぁ! 店外まで魅了が漏れてんぞ!」
ズバーンとドアを開けて怒鳴りながら入って来たのは、甲冑姿の騎士。このあたりを馬に乗って警邏しているデュラハンのアレハンドロさん。
「「きゃあぁぁぁ!」」
サキュバスお姉様二人が叫んでいるけど、これは喜んでいるやつ。
アレハンドロさんはかなりのイケメンらしい。
首から上が無いけど。頭が小脇に抱えられているけど。
「アレハンドロ様、一緒に食べましょぉ?」
「ほらほら、ここに来てぇ?」
「仕事中だっ! 魔力を引っ込めろ!」
「「はぁぁぁい」」
ついでになぜか私も怒られた。
サキュバスの魔力制御がゆるゆるになる食べ物を出すなと。ひどい。
「全く。外のやつ片付けるまで店から出てくるなよ」
よくわからないけど、店の外で男性たちが数人倒れているらしい。
流石にやばいなぁ。いつか本気で苦情が来そうな気がする。
「大丈夫、大丈夫。幸せな夢見てるだけだから」
「大丈夫、大丈夫。いつものことよ」
大丈夫らしい。…………え? 本当に大丈夫? 大丈夫なの? なら、いいかなぁ?
またお昼に。





