最終話:これからも、餌付けします!
お昼の営業が終了し、三人にどうだったかを聞いてみると、口々に楽しかった。でも、まだ夕方の営業時間があるから気を抜けないと、とてつもなく真面目な返答をされた。
各々で好きに休憩時間を過ごして、夕方の営業開始。
今回も私はカウンターで見守り。
めちゃくちゃ楽ポジションでお客さんたちとおしゃべりしながら、閉店までフォン・ダン・ショコラたちの仕事振りをチェックした。
閉店作業を終わらせて居住スペースに戻り、ダイニングで四人向かい合って座る。
私の隣はショコラ、向かい側にフォンで、斜めがダン。
四人のときは基本的にこの座り方になっている。そして、そこにウィルが戻ると、ショコラを摘んでイスから降ろして私の横に座る。
丁度帰ってきたウィルを見て、ショコラが私の左腕にしがみついたけど、無駄な抵抗なのよねぇ。
「ん、今日はどうだった?」
「それがね、三人とも完璧すぎて、心配してたのが馬鹿らしくなっちゃった」
三人とも本当によく働いてくれているし、順応力も高い。これなら心配ないなと思えてくる。
「ルヴィちゃん、ショコラたちね、ちゃんとお店出来たよ。もう心配ない?」
ショコラがウィルとは反対側にイスを持って来つつ首を傾げてそう聞いてくる。前はフォン・ダン・ショコラ三人で並んで座れたけど流石に狭くなって、ショコラだけ側面のとこに座ることになってしまっている。本人はフォンと私の間に座れるから嬉しいらしいけど。
「そうねぇ。きっといつまでも心配は心配だと思うのよね」
「むぅぅぅ、なんでぇ?」
頬を膨らませるショコラが可愛くて、頭を撫でつつどう伝えようかと考えた。
魔界の森から魔国に連れてきたときは完全にペットとしてだったのよね。なんだか毒持ちらしいけど、本人たちでコントロール出来るものらしいし、当時は子どもだから毒はまぁまぁ弱いとか言われたっけ。
ウィルが指輪をくれて人型で三人になって、同居人が増えて嬉しかった。
何より、三人ともがあまりにも可愛くて、いつの間にか幼い弟たちというよりは我が子のような感覚だったのよね。
つまりそれって――――。
「フォンも、ダンも、ショコラも、凄く大切な家族だからよ」
「好きだから?」
「ええ。大好きだからよ」
「ショコラもルヴィちゃん大好きだよ!」
座ろうとしていたショコラがガバリと抱きついて来たので、はいはいと抱きしめ返していたら、ウィルがいつの間にかショコラの後ろに立っていて首元を掴んでペイッと剥がしてきた。
大人気ないなぁと苦笑いしつつも、フォン・ダン・ショコラが大きくなったから余計にやきもちを妬いているのかと思うと、可愛いところがあるな……なんてちょっと身悶えしてしまう。
「これからもこうやって、毎日毎日、楽しく過ごして行けるかしら?」
ショコラがいじけてウィルをポカポカと叩こうとしているけれど、ウィルがショコラの頭を掴んで押しやっているので、届くことはない。
フォンはケタケタと笑い、ダンは参戦しようと立ち上がっている。
「ルヴィと俺がいて、コイツらがいる。もうすぐ娘も産まれる。当たり前だろう?」
「っ、うん。そうよね」
これから色々と変わることが出るだろう。それでも私たちは私たちらしく、毎日楽しく過ごせそう。
「あ、餌付けしたんだから、餌やりは忘れるなよ?」
「あははは。とりあえず、夜ごはん食べる?」
「ん!」
夕食後、リビングでのんびりと過ごしていると、ウィルが自分の膝の上に来るよう手招きした。
「ルヴィ」
「はいはい」
ウィルは私のお腹に手を当てると、娘に話しかけている。魔法でふんわりとした意思疎通が出来るらしい。
「ははっ。まだまだ腹の中にいたいそうだ。温かくてゆらゆら揺れて気持ちいいんだと」
「あらまぁ。のんびり屋さんみたいねぇ。いつでもいいわよ。貴女の好きにしなさいね」
いつか外に出てきたら、きっと騒がしい三人のお兄ちゃんたちがたっぷりと可愛がってくれるわよ、と話しかけながら。
―― fin ――
いつも読んでいただきありがとうございます!
ひとまずここで完結とさせていただきます。
お付き合いありがとうございました!
笛路





