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74:冷蔵庫?




「陛下は、葬式でさえ涙を流さないのかと言いましたよね?」

「…………あぁ」


 アレハンドロさんにそう言われ、ウィルが少し気まずそうに返事した。


「出ないんですよ。心は悲鳴をあげ続けているのに、出ないんです。苦しくて、悔しくて、怒りに任せて妻への暴言を吐いた。いろんな相手と付き合ったし、酒にも溺れた。何をしても、心に空いた大きな穴がどうやっても埋まらないんです。命を絶てば楽になれるかもしれないとも思いました。でも妻と約束したんです。最期までちゃんと生きて、いつかまたどこかで巡り逢おうと…………私はあと何年こうして生き続けなければならないのでしょうか?」


 心臓が締め付けられた。こんなにも深く傷ついても、アレハンドロさんは奥さんを愛しているんだと分かるから。


「っ……アレハンドロ」

「はい」

「長い間、すまなかった」


 ウィルが深く頭を下げた。それは魔王としてではなく、アレハンドロさんの友人としてのようだった。

 アレハンドロさんは、ふるふると顔を振って自分も意固地になっていたのだと言う。


「あのころ、陛下が怒ってくださっていたから、私は立てていました。妻や私を気にかけてくださって、本当にありがとうございました」

「よく話してくれたな。だがいまになってなぜだ?」

「ミネルヴァ様に聞かれた、ということもありますが、あれから一〇〇年経ちました。様々なことが変わって来ています。自分の身の振り方もそろそろ決めようかと」


 アレハンドロさんはいまはお義父さんの部下のようだけど、違う仕事でもしたいのかな? 隠居とかはまだ早そうな……って魔族の人って見た目じゃ分かりづらいのよね。


「陛下、これから陛下の身の回りは慌ただしくなります。どうか、私を再雇用してはくださいませんか。あのころの恩を返させてください」

「ん? 特に大きな仕事はないが?」


 慌ただしくなるってなんでだろう? ここ最近の世界情勢は落ち着いてるっぽいけどなーなんて考えていたら、アレハンドロさんにジッと見つめられた。


「もしや、お気づきではないのか?」

「「なにが?」」


 私もウィルもポカーンである。私また何かやらかした? ここ最近はそんな派手に開発したり……あ。そう言えばおじいちゃんに冷蔵庫の開発お願いしていたのよね。


「あえっ? 最新の調理器具ってもしかして冷蔵庫!?」

「ん? あぁ。先週ジジイが登録しにきたときに、丁度いたから祝いの品に入れ込んだ。ルヴィのとこにはまだ来てなかったのか?」

「もうすぐ出来るけど、一大事業になりそうだから整ったら納品するって言われてたのよね」


 私は案を出して丸投げしただけだから、諸々の権利はおじいちゃんに渡していたんだけど、まさかそれが――――。


「お二人とも……本当にお気付きではなかったのですか……」

「え? 冷蔵庫じゃないの!?」


 冷蔵庫じゃないなら、なんなのよ?




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