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71:ウィルの変化




 皆でワイワイと騒ぎつつ控室で過ごしていたら、いつの間にか夜会の時間になっていた。

 夜会にはフォン・ダン・ショコラたちも招待してもらっていたので皆で移動。立場的に入場は別々になってしまう。だからこそウィルはヒヨルドとアレハンドロさんを選んだんだろうなぁと思う。


 待機場所の近くにあったドアの隙間からこっそりと会場を覗くと、フォン・ダン・ショコラたちがご令嬢たちに囲まれ、撫で回されていた。

 ただ半分くらいはヒヨルドとアレハンドロさんをじっとりかつねっとりと見つめていたけど。


「凄いわね。なんというか肉食女子感が」

「人間は雑食だろう?」

「生物学的な食性の話じゃないのよ」


 肉食女子とか草食男子とかの言葉が前世で流行っていたと説明すると、ウィルがフォン・ダン・ショコラたちの集まりを見て「なるほど」としきりに頷いていた。


「国王陛下、ならびに――――」


 おしゃべりしていたら、王族と来賓たちの入場のアナウンスがされたので皆で移動開始。

 夜会の会場内で再度紹介のアナウンスがされ、国王陛下の挨拶が終わってからは自由行動になる。


「本日はよく集まってくれた。三〇周年というありがたい日に、もうひとつ嬉しい報告をさせて欲しい」


 国王陛下がそう言うと、シセルに手を伸ばし近くに来るよう合図した。


「既に知っている者が多いが、我が愛しい義娘が次代を宿してくれている。普通であれば性別は産まれてからしか分からないものだが、魔王陛下のご厚意でいま発表出来ることとなった」


 国王陛下が言葉を切ったところでウィルがシセルの隣に移動した。お腹に手を翳した瞬間、ウィルがふわりと微笑むものだから、会場がいろんな意味でザワリとしていた。

 目の端の方で、ヒヨルドが爆笑しているのだけは分かった。後でウィルに怒られそう。


「ん、男児だな。成長速度は充分だろう。病気も見当たらないし……はははっ。随分と活発なようだな。早く外の世界を見たいようだ。顔は王太子に似ていそうだな。ムカつくな」


 初めはウィルの言葉に皆が息を飲んでいた。まさかそこまで分かるなんて思ってもいなかったから。ただ、その後に続いた『ムカつく』に会場が笑いの渦に包まれた。

 なかなかにギリギリな暴言だったけど、冗談だと思ってもらえたんだろうなと、ホッとした。ウィルはかなり本気で言ったっぽいけど。

 シセルはウィルが本気で言っていたのが分かってて、楽しそうに笑っているけど。


「あぁ、そうだ。性別が分かると色々と面倒も起こるだろう」


 そう言ってウィルがストレージから取り出したのは、シルバーの腕輪だった。シセルの手首にはめながら「悪意を跳ね除け、人間程度の物理攻撃ならば一万回くらいは防御するはずだ」と言った。

 いつもの誰も使わない扱いの国宝のやつかー、出番あって良かったねとか思っていたら、今度はスノウフェンリルの毛皮とかいうものを出して、夏はひんやり冬はホカホカになるから赤ん坊を包んでやれとか雑に説明していた。

 流石に貰い過ぎだと国王陛下も王太子も顔面蒼白になっていたけれど、ウィルは首を傾げていた。


「ん? 義理だが俺の甥になる。当然だろう?」


 昔のウィルは、私さえいればいいといった感じはあった。でも私がシセルやフォン・ダン・ショコラたちを大切にしているのを見て、ウィルも同じように大切にしてくれるようになった。

 そういうところが本当に愛おしい。




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