65:シセルからの手紙
休みを終え、営業再開して一ヵ月経ったころ、ウィルから手紙を渡された。
封筒の中には妹のシセルからの手紙と式典への招待状が入っていた。
国王即位三〇周年記念式典への招待で『魔王陛下やフォン・ダン・ショコラちゃんたちと参加してくださいね!』と書かれていた。
「だって。一緒に行っていい?」
「ん……アイツらもか…………ハァ」
ウィルが大きなため息を吐き出して、少し難しい顔をしたので連れてくの無理なら大丈夫だよと言おうとしていたら「ヒヨルドはいいとして……」と呟いた。
ヒヨルドはいいとしてって、なんでヒヨルド? どういう意味だろうかと首を傾げたら、ウィルが眉間にしわを寄せてフォン・ダン・ショコラたちの監視権世話係を二人は連れていきたいとのことだった。
「俺とルヴィは式典に出るだろう? その間アイツらを放置は出来ないし、何かあった時にすぐさま対応できる能力のあるやつがいい」
「なるほど。それがヒヨルドね。もう一人は?」
「………………アレ……ハンドロ」
物凄く溜めて、苦虫を噛み潰したような顔と声で言われた。そんなに!?とは思うものの、パスコビルで聞いた話を思い出すと、そうなってしまうのかもなと思い直した。
確かに、アレハンドロさんだったら……いやちょっと待って、頭ないじゃん。種族を否定するわけじゃないと前置きして言いたい。物凄く申し訳ないが、頭がないのよ! 流石にちょっとハードルが高い気がする。私は前世の物語とかゲームで慣れてるわよ? でも――――。
「首無しは、ハードルが高いっ!」
「あー。まー、くっつけれる」
くっつけるとはどういうことよ。頭をくっつけられるの? え、それならなんで小脇に抱えてるのよ。不便じゃないの? あまりにも気になりすぎて、久し振りにウィルを質問攻めしてしまった。
「なんというかだな……磁石のようなものでな。反発し合うんだよ首が。それを無理やり押さえつけてくっつける。莫大な魔力で」
「対処が力技のみなのね」
「ん。やつの魔力でも二日程度しか無理だな」
確かアレハンドロさんの魔力はヒヨルドよりちょっと少ないくらいだとか言っていた気がするから、かなり上位の魔力の持ち主のはず。それでも二日程度だということは、本当に大変なんだろうなぁ。
「そうなんだ。いやでも首無しは本気でマズい気がする。お店にきたときにごめんねって言っておくね」
「ん」
確かにフォン・ダン・ショコラたちの監視というか付き添いは欲しいから、アレハンドロさんにもいて欲しい。そう伝えると、ウィルは渋々といった感じで了承してくれた。





