57:ドワーフの町
山岳地帯の中腹より少し上辺りで馬車が止まった。ここの町はソンゴウシャンと言うらしい。
乗合馬車なので馭者さんとはここでお別れ。次の馬車が来るまでは三時間あるらしい。お買い物をしてゆっくりとお昼ご飯を食べればちょうどいいくらいかな、なんて話した。
「ちょっと立ち寄りたいところがあるがいいか?」
「うん」
どこに行くのかなと思ったら、この町を統治している町長さんに挨拶するらしい。ついて行っていいのかなと思ったものの、私を紹介したいとのことだった。
やばい、完全にバカンス服だけど!? と焦ったものの、気にしなくていいとのこと。こういうときのウィルはなぁ、完全に魔王感覚だからなぁと文句を言うと、周りを見てみろと言われた。
「全員ラフな服だろ」
「確かに……ってか、ここってドワーフさんの町みたいなとこなの?」
町を歩いているのは、ちょっと背が低めでずんぐりむっくりとした、筋肉質な人たちだった。男性はほとんどがモサモサなお髭を生やしている。
服装はウィルのいうようラフな感じで、シャツに茶色い作業ベストとズボンみたいな人がかなり多かった。そして、かなりの人が何やら作業道具を腰にぶら下げたり、工具箱みたいなものを持っていた。
「ん、ドワーフだな。ヨルゲンみたいに、手に職を持ったやつらが多い。あと、辛い料理と酒好きだ」
辛い料理ってなんだろうと思いつつウィルについて歩いていると、ふとごま油と香辛料の香りに気が付いた。町に入ったときからどこかで嗅いだ覚えのある匂いだなとは思ってたけど。そうか、これって中華料理独特の匂いだったんだ。
歩きつつ、通りがかりのお店を覗き込むと、店内のデーブルにガッツリ中華料理が並んでいた。
「ウィルウィルウィルウィルウィルウィルウィル!」
「うるさい」
「食べたい!」
「ん。後でな」
「はーい」
フォン・ダン・ショコラたちは辛さが目に染みるとか、鼻が痛いとか言っていた。鼻にティッシュでも詰める? って聞いたら、なんでか四人から酷いと言われた。なんでよ?
「ほら、着いたぞ」
そう言われて指さされたのは、石造りの重厚な要塞みたいな家だった。
中に入り町長さんに挨拶。
ウィルは町長さんと山岳部で取れる魔石の話を何やらしていた。私には産出量やら何やら難しいことは分からないので、町長さんの奥さんに美味しい料理やさんを聞いたり、おすすめの食材店を聞いてメモを取った。
「山は朝夜が酷く寒いですからね、餡掛け系の料理が多いんですよ。外の人は口の中を直ぐ火傷するからね、気を付けてくださいな」
「なるほど!」
餡掛けってなかなか冷めないもんなー。





