15:食べたいなら、作るしかない。
お店を始めて、一ヶ月。
割と平和に営業している。
ストックは結構早くに無くなるので、ゆるゆるっと毎日のようにストックを作るようにした。
休みは毎週水星。
本当にあの作者さん、面倒だからって安直な名前にしすぎ。『水曜日』=『水星』だなんて。読んでいたときは気にもしなかったけど、自分がその中に飛び込むとなると話は別。
『明日、火星だっけ!?』とか、なんかSF設定の中二病みたいで恥ずかしい。
休みの日は基本的に休むようにしているけれど、ストックが怪しいときは少しだけ働いてみたり。
今日もソレ。
「あっつーい!」
「「わふぅ?」」
唐揚げを揚げまくって、汗ダラダラ。
季節は夏に差し掛かっている。
「カキ氷が食べたーい!!」
暑いと食べたくなるアイツ。
勢い良く食べると頭キーンの刑になるけど、食べたい。ものすごーく食べたい。ガッツガッツと食べたい。
「え? ないの?」
「そんなものは、見たことも聞いたこともないですよ」
唐揚げを作り終えて街をぶらぶらしていたら、カエルな不動産屋さんに会ったので聞いてみた。
まさかの無いパターン。
「えー…………食べたかった………………作る? でもなぁ……でもなぁぁぁぁぁ」
「聞く限り、夏場限定の商品になりそうですねぇ。なにか特別に必要なものはあるんですか?」
かき氷といえば、氷を削るアイツ。アイツがなければ、どうにもこうにもならない。
不動産屋さんが調理具店に相談したらどうだろうかと提案してくれた。どうやらオリジナルの調理具なんかの注文も受けてくれるらしい。
「魔具師が気難しいので、交渉次第ですが。彼はあなたの店によく行ってるので、大丈夫だと思いますよ」
「えぇ? 誰だろ?」
お店に来てくれているらしい。全然気付かなかった、というかお客さん自身が話さない限りは詮索しないようにしてるからなぁ?
とりあえず、調理具店に向かうことにした。
「こんにちわー」
「「わふー」」
店舗に入った瞬間、入口横に寝そべるフォン・ダン・ショコラ、何なの? くつろぎ過ぎじゃない?
「おや、定食屋のミネルヴァさんじゃないですか」
「あ、昨日ぶりです!」
店員さんは知ってる。毎日のように来てくれているから。
軽く世間話をしつつ、かき氷器を作って欲しいと話した。
「へぇ、新しい料理のための魔具ですか……面白い。ちょっとお待ちを」
店員さんがパタパタと裏手に走って行き、連れてきたのはまさかのナマズのおじいちゃんだった。
「お? 嬢ちゃんじゃないか」
「おじいちゃん、魔具師なの!?」
「おお。言っとらんかったかの?」
「聞いてない!」
ナマズのおじいちゃんは開店初日からのお得意さんだ。これなら話は早い。
「作って! どーしても食べたいのっ!」
「お前さん……そういうとこは、物凄く貴族のお嬢様らしいな」
なぜか苦笑いされた。
店員さんもクスクスと笑っている。
――――え? 本当になんで!?
ではでは、夕方に。