55:お味噌!
朝起きて、うーんと伸びをして、隣で眠るウィルの頬を撫でる。
「ん?」
「おはよ」
「ん」
まだちょっと寝ぼけているらしいウィルを放置して、ノースリーブワンピースに着替えて、身なりの確認。
荷物は昨日の内にある程度片付けていたので、あとはウィルのストレージに入れてもらうだけでいい。
「フォン・ダン・ショコラたち起こしてくるわね」
「ん」
パタパタと隣の部屋に移動し、大型犬になっているフォン・ダン・ショコラを叩き起こす。
「起きてー、帰るわよー」
「「わふぅぅ」」
三頭があふあふと大きな欠伸をしながら、返事をして立ち上がってくれた。
思い思いに想像したらしい自分に似合う服で人型になり、もう一度グーンと伸びをする。頭上のはるか上に伸びる腕を見て、でっか……と言葉を失っていた、ショコラが抱きついてきた。
「るゔぃちゃん、ちっちゃくてかわいい!」
「おはよ、ショコラ」
「おはよー」
よしよしと背中を撫でていたら、瞬間移動で現れたウィルがショコラの首根っこを掴んでベリッと引き剥がした。
「くそ……忘れてた」
「なにを?」
「…………鈍感め」
なぜか鼻の頭をぎゅむむとつままれて怒られた。
お義父さんや使用人さんたちに挨拶して、お屋敷を出発。港町にちょろっと寄り道してライスペーパーやアジアンな感じのする食材や調味料探し。
「あーっ! お味噌あるっ! え、どうしよう…………赤味噌もあるじゃない」
赤味噌があるということは……鯖味噌が出来る。お味噌汁も飲める。豚肉とキャベツの味噌炒めとか、肉味噌とか、味噌焼きおにぎりとかとかとか……え、最高じゃない!?
「なんだこの臭いは……」
「味噌!」
「たべものなの?」
フォンが鼻をつまみながら首を傾げていた。そっか、発酵臭がするから獣人系はつらいのかも? かといって、買わないという選択肢はないんだけども。
「お料理の幅がめちゃくちゃ広がるから、爆買いします!」
「「えーっ」」
フォン・ダン・ショコラからのブーイングなんて気にもしない。美味いは正義! 匂いは慣れたらめちゃくちゃいい匂いだ! 特に火を通すと……あっ、もう涎が出てきた。淑女としてまずい。
「おい、ジュルッとかいってるが?」
「おっと、失礼」
そう言って口の横から涎が垂れてないか確認していたら、ウィルがくすくすと笑い出した。私がそこまで言うんなら、本当に美味しいんだろう、好きなだけ買え。そう言いながら頭をそっと撫でてくれた。
ありがとう、ウィル。そしてストレージにいろいろ入れておくれ。念のためにと現金いっぱい用意してて本当に良かった。
家で使う分に関しては、ウィルが後から補充してくれるらしい。食事量的にウィルのみがどえらい消費量だから、食費は全部ウィル持ちになっている。
以前話し合ったときに、生活費も全部払うとか言い出したけど、それだととんでもなく甘えてしまっているって感覚になっちゃうし、魔界で安全安心に生活するという計画が無駄になっちゃう。あのときの気持ちはずっと大切にしていたいのだ。
「買い忘れはないな?」
「たぶん!」
当初の希望通り、帰りは高速移動馬車で各地に立ち寄りつつ、魔国に帰る。
馬車に乗る前から既にワクワクだ。今度はどんな美味しいものに出会えるかな。
諸々で止まっていた連載再開です!!
あと、しれっと他にも2つ連載始めてますので、気になる方はぜひっ!
押し倒し系(?)と、砲弾孫娘系(?)です☆





