51:目覚めたものの
遅めの昼食を終わらせ、部屋でちょっと食休み。ウィルはまだ眠かったらしく、ベッドに入ると直ぐに眠ってしまった。体半分にだけ掛けられた毛布を肩まで引き上げた。
ウィルの寝顔はわりと穏やかだったのでホッとした。
お義父さんいわく、魔力切れは酷い風邪をひいたときのようなだるさが全身を襲うのだとか。人によっては頭が割れそうなほどの頭痛も。ウィルに大丈夫かと聞いても大丈夫だとか平気だとかしか言わない。
「ちょっとくらい、頼ってくれてもいいのよ?」
眠ったウィルの頭をそっと撫でると、なんとなく寝顔が更に和らいだ気がした。
ベッドの横にイスを移動し、そこで本を読んでいると、フォン・ダン・ショコラたちの見守りをお願いしていた侍女さんが部屋を訪れた。
「ミネルヴァ様、お三人が目覚められました。その……すこし見ていただきたいのですが……」
「ほんと? すぐ行くわ」
そっと本を閉じ、なるべく音を立てないようにして部屋を出て、フォン・ダン・ショコラたちの元へと向かった。見てもらいたいことってなんだろう?
妙に焦っている侍女さんを疑問に思いながら部屋に入ると、ケルベロス型のフォン・ダン・ショコラが勢いよくお腹にドーンと体当たりしてきた。そのせいで、令嬢らしからぬ「ふぐぉぇっ」とかいう変な声で悶えながら尻もちをついて倒れてしまった。
「もうなに…………よ? あれ?」
なんというか、フォン・ダン・ショコラがでっかい。ちょっと大きめの豆柴サイズから、ハスキー犬サイズになっていた。
「でかくない? は? え? お昼までいつものサイズだったじゃない!」
「「わふぉぅぅう」」
「ケルベロス語は分からないんだってば。人型になってちょうだいよ」
そう言うと、フォン・ダン・ショコラたちが一斉に項垂れ、呆れたようにフルフルと首を振った。
なんでそういうジェスチャーは分かりやすく出来るのよ。なんか納得行かないわね。
「ミネルヴァ様、その……」
侍女さんが妙にいいづらそうにしながらも説明してくれたことによると、目覚めたときは豆柴サイズだったそう。それから人型になったら、全裸の青年三人が出てきたそう。慌てて服を出すように言うと、作れないと言われたそう。
なるほど、それでケルベロス型に戻らせたら、なぜかケルベロス型も大きくなったと。
意味が分からなさすぎる。とりあえずウィルとお義父さん召喚案件ね。
ウィルを呼びに行こうとしたら、フォン・ダン・ショコラたちがまたもやドーンと体当たりして行くなと引き止めてきた。どうやら、自分たちでもなぜこうなっているのか分からなくて、パニックになっているようだった。
「んもぉ。三人とも動けるのよね?」
「「わふぅ!」」
「それならとりあえずリビングスペースに移動するわよ」
ウィルを起こすのは侍女さんにお任せした。





