50:急遽のあんかけカニチャーハン
生春巻きはフォン・ダン・ショコラたちと一緒に食べることになったので、急遽別のものを作ることに。
生春巻き作りで余ったカニ身がまだあるので、大急ぎでカニチャーハンを作ることに。
山盛りのご飯に溶き卵を入れ、ほぐしたカニ身もどっさりと入れ、しっかり混ぜる。
具材はこれだけでいい。フライパンで炒めるのだけど……腕力と消費量が合わないので料理長さんがやってくれた。
「ほんと、ごめんなさいね」
「いえいえ。これくらいの仕事はさせてください」
チャーハンは初めてだと言われたものの、説明すれば卒なくこなす料理長。流石、長なだけある。
料理長が炒めてくれているので、私はその横でカニあんかけを作ることにした。
フライパンでお醤油を焦がし、そこに酒や塩、少量のお砂糖も入れて、中華スープがなかったのでブイヨンを入れてみた。味見したけど思ったより中華風の味になってホッ。
そこにほぐしたカニ身を入れ、水溶き片栗粉でとろみ付け。片栗粉あるのに、中華スープないのは何でよと聞きたいが今じゃないはず。
片栗粉を回し入れてしっかりととろみをまんべんなく付ける。そして、ここで必ず一分以上は火を通す。そうすることによって、時間が経ってもしっかりととろみが付いたあんかけになるのだ。
「火をしっかりと通さないと、シャバシャバになるのよね」
あれはあれで好きなんだけどね。シャバシャバにご飯シミシミさせるのも美味しいの。
「チャーハン、出来ました」
「ありがとうございます!」
大きめのスープボウルにカニチャーハンを丸く盛り付け、そこにカニあんかけをたっぷりと。白ごまか黒ごまがあれば、上にパラパラと振りかけると見た目も匂い付けにも丁度いい。
ダイニングに運んで、ウィルとお義父さんと三人でいただきますをした。
「熱いから気をつけてくださいね」
「ん」
「本当だね。湯気がずっと出てるねぇ」
ウィルが慣れた感じでフーフーと息を吹きかけてパクリ。それを見たお義父さんが同じように真似してパクリ。
前世の記憶がある私には違和感のない行動なんだけど、貴族の慣習の中で過ごしていると、そもそもフーフーすることがない。
温かくはあるものの、熱すぎるものを出されることはなく、適温なのだ。個人的には『ちょいぬるっ』という気分だけど、そういうもの。
そして、鉄板で出される場合は、ゆっくりと切り分けて時間経過で少しだけ冷まして食べるので、結局は熱々を食べることは早々ない。
「はふっ、んっ、はふっ…………んまい」
ウィルがハフハフと息を吐きながらあんかけカニチャーハンをもりもりと食べていく。いつもの二倍盛りくらいにされていたのに、吸い込まれるようにして消えていった。
お義父さんはそんなウィルを横目に、ゆっくりと上品にハフハフなりつつも食べていた。
「カニの甘みがとても優しいね。それにこのあんかけというものは、とても口当たりがいい。凄く美味しいよ」
「ありがとうございます」
料理長さんに作り方は教えているので、そのうちいろんなアレンジをしてくれるんじゃないかなーなんて、しれっと無茶振りをしておいた。