45:ちょもっと回復
朝方目が覚めた。なぜなら、夕方早くに寝たから。もう眠れないぞ、という気持ちで起き上がりたいけど、ウィルの腕の中に閉じ込められている。
「もしもーし? 生きてますかー? もーしもぉぉーし!」
「…………起きてるが、なんだその『もしもし』というのは」
もしもし? もしもしってなに? なんか電話でよく言うよねくらいの認識だった。たしか『もし』って言うと妖怪がなんたらかんたらで駄目だから、二回繰り返さないとって、おじいちゃんとかおばあちゃんたちが話してたのを聞いたことがある。
「枕詞?」
「マクラコトバ?」
なんか違いそうだけど思いついたから言ってみたら、今度は枕詞の説明をしろと言われてしまった。枕詞ってないの? え? てか、枕詞ってなに?
「それは教えられないな!」
「アホか。分からないだけだな?」
「そうとも言う!」
はぁ、と大きなため息のあと解放された。お前と話すと気が抜けるという褒め言葉とともに。
「体調はどう?」
「ん、三分の二いかないくらいは回復した。ちょっと疲れたなってくらいだ」
「そっか。それなら今日はゆっくり過ごそ?」
「ん。せっかく楽しみにしていたのにすまなかったな」
ウィルが謝ることじゃないよと言うと、フォン・ダン・ショコラたちだけで行かせて大丈夫だと言ったのは自分だからと、責任を自分のものにしようとした。
最終決定を下したのは私だし、ウィルやフォン・ダン・ショコラたちの言葉を信じると決めたのも私。
それぞれに責任はある。
ウィルはそれでも納得できていなさそうだった。
「喧嘩両成敗って言うじゃない?」
「…………意味が違うが?」
「細かいなぁ、もぉ! みんな悪いし、みんな悪くない。たまたまそうなったの」
リスクマネジメントは確かに大切だろうけど、だからって何でもかんでも危ない駄目って言ってたら何も出来ないし、何もしない子になっちゃう。
「失敗したら、また考えればいいじゃない!」
「……お前は楽天的だな」
「あら、気に食わないの?」
「いや、好きだ」
不意に言われたその言葉に、顔から火が出そうになった。
ウィルはクスクスと笑いながら、そういう初心な反応も可愛いとかなんとか追撃してくる。ウィルめ、いつの間にスケコマシな技を身に着けたんだ!
「スケ……?」
「お気になさらず。それより! 昨日のでストックかなり減ったわよね? 何か作る?」
「ん。食べたことがないのがいい」
「えー?」
食べたことがないのってなんだろう……って考えたら、思ったより色々と浮かんできた。アジアン系とかあんまり作ってなかった気がする。
んー。生春巻きとかも食べたいなぁ。ライスペーパーとかあったかな? なさそうだけど、何かで代用できたりしないかなぁ?
ウィルはまだ眠いらしいので、寝ておくよう言って部屋を出た。
料理長さんにストック見せてもらって、ちょっと相談してみたりしよう。代金はウィルが払ってくれるはず。





