表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/169

41:一〇〇年前の出来事

 



 子どもの話はまたいつかということで横に置いた。

 港町での買い出しを終え、お腹が減ってきたので海を眺めることが出来るテラスのあるレストランに入った。

 昼食を待つ間の話題として、アレハンドロさんのことを聞いてみることにしたのだが、ジロリと睨まれてしまった。

 一〇〇年前にクビにしたってきいたけど、未だにこんなに怒っているなんて、何があったんだろう。


「……アイツの考えていることが分からない」


 ウィルがぽつりぽつりと漏らした内容によると、アレハンドロさんには元々奥さんがいたようだった。魔力も多く、戦闘能力も高いアレハンドロさんは、近衛騎士としての仕事以外にもウィルの右腕のようなこともしてくれていたらしい。

 ある日、アレハンドロさんの奥さんが重い病に倒れたそう。看病のために長期休暇を取れと言ってもアレハンドロさんは首を縦に振らなかったのだとか。


 ちなみに、魔法で病を治すことはできない。ケガは治せるのにだ。

 以前ウィルとケンカしたときに頬に怪我をさせてしまった。そのとき、ウィルは何でもないようにスッと治していたけれど、実は莫大な魔力を消費していたらしい。

 治癒魔法を使うのは大変なんだとか、ヒヨルドが熱弁を振るっていたっけな。


「なんでなの?」

「職務を全うすると誓っているから、としか言わなかった」


 奥さんの病状がどんどんと悪化していると聞き、ウィルはアレハンドロさんにまた休むように言ったらしい。だけど頑として首を振らなかったのだと。だから、ウィルはアレハンドロさんをクビにしたらしい。


「えぇ?」

「クビにすれば、さすがに休むだろうと思っていた」


 どうやらアレハンドロさんは、直ぐにお義父さんのところに行き、お義父さんに雇ってもらっていたそう。

 そして、任務で留守にしている間に、奥さんは息を引き取ったのだとか。


「葬式であいつは涙一粒さえ流さなかった……しかも、数年後には、女をとっかえひっかえだ」


 奥さんとも顔見知りだったウィルは、奥さんを蔑ろにしていたことが、とても許せなかったのだとか。アレハンドロさんはまるで奥さんの死を望んでいたんじゃないかとも思っているらしい。

 

 あのアレハンドロさんがそんなことをする人なのだろうか?

 魔国内を警らするアレハンドロさんを思い出す。どんな魔族にも誠実に対応し、時々厳しく怒鳴るけどそこには愛があるって分かるから、みんな笑顔で返事している。


「そのことについて、話したりした?」

「アレハンドロとか?」


 ウィルの表情は、なんでそんな無駄なことをとでも考えていそうなものだった。

 今度、アレハンドロさん掴まえて聞いてみようかな。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 発売中! ◇◆◇


魔王様の餌付けに成功しました ~魔界の定食屋で悪役令嬢が魔族の胃袋を掴みます~
書籍表紙


表紙&挿絵は『犬月煙』先生っ!
もうねもうね、表紙の2人もだけど、フォン・ダン・ショコラがめちゃくちゃかわいいの! 見てほしいっ。

※書籍化に伴い、タイトル・内容・キャラクターなど、大きく変更しております。

♣ ネトコン12受賞 ♣
双葉社Mノベルスf様より、紙&電子で発売です。
笛路初の紙の本んんんんっ!ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

販売店舗一例としてリンクボタンを置いておきます。


▷▶▷ 双葉社

▷▶▷ amazon

▷▶▷ 紀伊國屋書店

▷▶▷ シーモア

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ