39:生き物を飼うということ
睡蓮の池からお義父さんのお屋敷に戻って来たものの、フォン・ダン・ショコラたちはしょんぼり。
お義父さんがどうしたのかと心配していたので、三人が妖精さんを連れ帰りたいと言ったものの、私とウィルに却下されて凹んでいるのだと伝えた。
「おや、彼ら出て来たのかい。珍しいねぇ」
何が珍しいのかと聞けば、警戒心が強く、穏やかな野生動物や魔獣くらいにしか近づかないのだとか。そういえばウィルもそんな感じのこと言っていたっけ。
なるほど、フォン・ダン・ショコラは妖精さんたちに魔獣認識されていたのか。
「ほしかったの」
「ショコラ、生き物は簡単に連れてきたりしちゃ駄目なのよ」
「なんでぇ?」
「ショコラは妖精さんを連れてきて、どうしたいの? 妖精さんのことは考えた?」
フォンがショコラのフォローをしようと、必死にちゃんとお世話出来るからと話していた。
だけど、そういうことじゃない。
見た感じ、妖精さんは群れで暮らしている。そして、食べ物は花の蜜とかっぽいけど、はっきりとした答えは分からない。寿命もよく分からない。
一匹だけ連れ帰って、淋しい思いをさせるかもしれない。そうしたら、精神的に弱るだろう。ここには獣医なんていなさそうというか、誰に見せたらいいんだ問題もある。
「だからね、簡単に命のある生き物を連れ帰っても、命を奪うだけなの」
「……オレたち、ごしゅじんにひろってもらったぞ」
「ルヴィちゃんといて、しあわせだよ?」
「っあー……いやぁその、えっとぉ」
やばい! これはやばい。ええ、ええ。確かに私も安易に拾ってますね。そして、力いっぱい愛でいるという事実に、むぐぐと口籠っていたら、ペチコンと後頭部が叩かれた。
「ガキに言い負けるなよ」
「いや、だってさぁ。てれっと連れてきたもんなぁって」
ウィルが三人の前に跪き、フォンの頭頂部をガシッと掴んだ。いつも扱いが雑だなぁと思うものの、お互い気にしていなさそうだからツッコミを入れるか悩ましいところだ。
「そもそもお前たちの飼い主は誰だ」
「ルヴィちゃんです」
「お前たちは働いて報酬を得ているから、自分たちでなんでも出来ると思っているかもしれないが、飯代や家賃等は一切差し引いていない額をアイツは与えている」
――――えっ、そうなの?
いろんなお客さんに聞いて、時給三〇〇ウパくらいだろうとは言われていた。流石に安すぎるから五〇〇ウパにしていた。それでも安いよなぁと思ってたんだけど。
もしかして、生活費とか差し引いて三〇〇ウパだったのかな!?





