35:ここで会ったが一〇〇年目のやつ?
みんな満腹になって、リビングスペースで食休みしようと移動している時だった。
見慣れた姿を発見!
「アレハンドロさん!?」
首無しデュラハンで、お義父さんの直属の部下だったらしいアレハンドロさんが、お屋敷の入り口で別の騎士さんと何やら話し込んでいた。
「っ、これは気付きませんで……」
頭を下げるというか、腰を落として謝罪された。
「……チッ」
ウィルが盛大な舌打ちをしていた。そういや仲悪いんだっけなぁと横目で見つつ、アレハンドロさんとお喋り。
なにしてるのかと聞けば、お義父さんから返事が帰ってきた。
「んー? 観察対象がここにいるからだよ」
「観察、対象? …………ウィル?」
「あはははは! ウィルフレッドの観察はいらないよぉ。義娘とフォン・ダン・ショコラたちの観察だよ」
「私らかっ!」
衝撃的過ぎて、ナチュラルにツッコミを入れてしまった。
なんで観察されてたんだろう? 素直に聞いてみたら、普通に教えてくれた。
興味本位と、好奇心と、一応の護衛。
「一応……」
「いやね、ウィルフレッドが防御壁を張っちゃってるし、護衛の意味はなかったしさ。ミネルヴァちゃんが一人でだったりフォン・ダン・ショコラたちとお出かけするときくらいにしか役立ってないよ」
役立つって。確かアレハンドロさんってかなり強かったはず。それを私の観察に使うってどうなのよ。まったくもう。ここの人たちは規格外すぎる気がする。
「アレハンドロ、警備にもどっていいよ」
「失礼いたします」
いつものキビキビとした動きで、アレハンドロさんは去っていった。その瞬間またウィルが舌打ちしていたのが面白くて笑っていたら、鼻ギュムムの刑を執行されてしまった。
「なんでそんなに嫌ってるのよ」
「べつに」
ウィルが顔を背けるけど、追いかけてジーッと見つめていたら、お義父さんがクスクスと笑い出した。
「アレハンドロは、ウィルフレッドの護衛でもあったからね」
「へぇ! でもそれなら仲良くなるもんじゃない?」
護衛ってことは、四六時中レベルで一緒にいるわけだし。
それに護ってもらうってありがたいことだし、距離も近づく気がするんだけど、何か仲違いするようなことがあったんだろうか。
「一〇〇年前くらいだったかい? アレハンドロをクビにしたのは――――」
「その話はしたくない」
キッパリとした拒否だった。
一〇〇年前に何があったんだろうか。ここで会ったが一〇〇年目!みたいな因縁がありそうな流れだ。
夜にでも聴いてみるかなぁ。嫌って言われたら仕方ないか。





