28:魔界と人間界
食後、フォン・ダン・ショコラたちの部屋を確認した。ウィルと私の部屋と大差なく、お風呂なども自分たちで出来そうだったので、あとは三人の自由時間にした。
念のため、隣の控室には侍女さんが待機しているとのことだった。何かあったらすぐに呼んでくれるそうなので、大丈夫だろう。
ウィルと部屋に戻り、お風呂に入ってまったりしたあと、ソファに座ってお喋り。
「で、なんで距離の近い魔王目指してんの?」
「権力や武力で従えても碌なことにはならない…………と親父が魔界と人間界の戦いを止めた」
「へぇ!」
知らなかった。昔々の出来事だと思っていたけど、ウィルたちにとってはつい最近のことだったのかもしれない。
「確かに、お義父さんってそういうこと言いそうだし、やりそう」
「ん。で迎えたのが母親だった」
「なるほど」
現在魔界と人間界で結ばれているのは人魔友好条約。その証として、お義父さんはウィルのお母さんと結婚したのだという。
もちろん、二人は恋愛結婚ではあったそう。
ただ、魔力が人間に及ぼす変化までは、把握しきれていなかったことで、ウィルのお母さんは残念な結果にはなってしまったとのことだった。
「その後の諸々は割愛するが、俺に代替わりして、血気盛んな奴らが人間界との友好関係を終わらせようと動き出したんだ」
お義父さんの政治方針や魔力量に不満を持っていた魔族は少なからずいたらしい。人魔友好条約のせいで自分たちは抑圧されていたという嘆願が届いたり、人間の国を襲った者もいたのだとか。
確かに、歴史書に魔王の代替わり時に一部の魔族が攻め込んできて、友好条約にヒビが入りかけたとかなんとか書いてあった気が…………って、ウィルの代の話だったのか!
いや、そうか。この人、三〇〇歳超えてるんだった!
「おい、顔」
失礼だな。ちょっと『おじいちゃん大変だったねぇ』みたいな優しめの感情が湧いてただけなのに。
「親父の方針は、正しいと思う。内側を見るよう仕向けていたからな」
私たちが今住んでいる魔国を作ったのはお義父さんらしい。それまでは魔界の中にぽつぽつと種族の集まった地域があるだけで、種族間の交流も少なく、各々が勝手に人間界を襲っていたのだとか。
武力・能力的に劣っていると思われがちな人間だが、大人数での戦い方は抜きん出ており、経験も豊富だ。少数の魔族ならば倒せるらしい。
「それで勝手死ぬ魔族に関してはどうでもいい。残された者たちはどうなる? 襲われた人間たちの怒りは? 弁償では済まされんだろう。血で血を洗い流せなどしない」
「そうね。延々と負の連鎖よね」
「自分の国を自分たちで作り、日々の生活を豊かにするほうが、体も心も健康だろう」
でも、それと距離の近い魔王は関連するのだろうか?





