26:ちんたらなコース料理
荷物の片付けを終えて、お義父さんの待つリビングスペースに向かうと、フォン・ダン・ショコラたちが人型に戻っていた。何やらお義父さんと楽しそうに話している。
「――――だよ! すごく、おいしいの」
「そうかそうか。それはすごく楽しみだねぇ」
「うん! あっ、るゔぃちゃん!」
ショコラがパタパタと駆け寄ってきて、腰にドーンとしがみついてきた。ゆっくりと頭を撫でてあげると、ピルピルと耳を動かし喜んでくれる。うむ、可愛い。
なにを話していたのかと聞けば、唐揚げの話だった。どうやら明日のお昼は唐揚げ確定らしい。
「唐揚げか? 持ってるが?」
「…………ストレージに?」
「ん」
いやまぁ、ストレージってそういう役目だけどさ、いつから持ってるんだ。いつのだ。っていう気分にはなるよね。
仕事が立て込んでいるから魔王城に持っていく、とか言ってストレージに入れることはちょくちょくあるので、その時のものだろうけど。
「くっ……そそられるが、明日の楽しみにしておくよ」
「はーい」
ウィルが小さく舌打ちしたので、お義父さんをストックで丸め込もうとしていたんだろうな。
理由はなんだろうか? 夜にでも聞くかなぁ。
夕食のためにダイニングルームに移動した。そこは、とても豪華な空間で、またもやお義母さんの絵が飾られていた。今度はウィルであろう赤ちゃんを抱いた姿。
「綺麗ですね」
「うん。見た目もだけれど、心もとても綺麗な人だったよ」
お義父さんが懐かしむように緩やかに微笑んだのを見て、いつか死がウィルと私を分かつとき、こんなふうに微笑むことの出来る関係でありたいなと思った。
まだまだ先だと思いたいし、やっぱり凄く辛いんだろうけど、後悔のないように生きたい。
「さ、席に着いて食事にしよう」
お義父さんのその言葉とともに、給仕さんたちがテキパキと動き出した。
まずは食前酒から。フォン・ダン・ショコラたち三人は、大人の仲間入りだとか喜んでいたけれど、それはぶどうジュースだよ。まぁ、楽しそうだからいいけど。
そのあと、前菜やスープと続き、トマトの冷製スープに舌鼓を打っていたら、ダンがなんで一皿ずつちんたら持ってくるんだ? と首を傾げていた。
「コース料理だから、ひとつのお料理をゆっくりと堪能していくのよ」
「「へんなの」」
「へんー」
「そういえば三人ともコース料理は初めてだっけ」
お義父さんにフォン・ダン・ショコラたちが失礼なことを言ってすみませんと謝ると、クスクスと笑って三人にいいことを教えてあげるよと言った。
「私もちんたらしててそんなに好きじゃないんだがね、我慢した末に届くんだよ?」
「「なにがとどくの!?」」
「ぶ厚くて柔らかーい、お肉! しかも食後には甘ーいお菓子まで!」
お義父さんがニンマリしてそう言うと、フォン・ダン・ショコラたちがワウーッと遠吠えした。人型のときでも、興奮すると時々吠えている。本能からではなくて、遊び感覚でだけど。
ケルベロス型の時に私が一緒に吠えていたので、吠えるものと思っていそうで怖い。
だけど三人が楽しそうなので止めないし、なんなら私も吠えておく。
「わうーっ!」
「あはは! ワウーッ!」
お義父さんも楽しそうに参戦し、ウィルはするかなと期待を込めて見たら、アイアンクローされた。チェッ。
本日、同時に更新しておりましたアイスちゃん完結しております!
美味しいアイスとヘタレで可愛いヒーロー用意してますんで、ぜひ!
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