24:前世と冷蔵庫
どうしてこうなった!
いや、原因は調子に乗りすぎた私が悪い。あまりにも子どものころのウィルが可愛すぎて、自重しようと思っていたのに、ツンツンしすぎた。
「いーひゃひゃひゃひゃひゃっ、いひゃいよ!」
デコピンでもアイアンクローでもなく、鼻ギュムムの刑だった。
「お前だって、幼いころに変なことはやっただろ?」
変なことと言うということは、認識してるんだね? 魔法で脳筋解決事件。
ウィルに言われて考えてみたけれど、ミネルヴァ自体の幼少期の記憶が薄いのよね。かなり早い段階からめちゃくちゃ厳しく教育されていたのは覚えてる。だからこそ、妹であるシセルに婚約者を譲るよう言われて、心を闇に染めた。
両親は経緯が経緯だったこともあり、荒ぶるミネルヴァに何もいえずただ祈るばかりだったのだと思う。両親はそれが自分たちの甘さだったと言っていたけれど……んまぁミネルヴァからしたらあのセリフは余計に荒ぶる気がするけども。
ミネルヴァの出身国・エーレンシュタッドの貴族は、子どもは家の繋がりや政治的役割としてしか見ていないので、仕方のないことだとは思う。
「前世のほうでは色々やったかなぁ」
寝坊して熱がある振りをして学校を休んだり、門限破ったり。両親は毎回苦笑いしてたなぁ。たぶん前世の私は顔に出やすかったからバレバレだったんだろうな。
「今も顔に出やすいがな?」
「というウィルの言葉は聞こえないことにした、まる」
「いや、聞こえてるだろ」
前世ってどういうことだい? とお義父さんに聞かれたのでペロッと経緯を話すと、目を煌めかせて前世のことをもっと聞きたいと言われた。なんだかデジャブを感じる。
そういえば、ウィルも聞きたがったな。あれは最終的には彼氏や夫がいたのか気になってたやつだったけど。
「前世は、魔法がない世界でした」
「魔法がない? まぁ、人族は使えないしね」
「あー。人族しかいない世界なんですよね。魔族とかは物語に登場するだけで」
妖精さんとか、小さいおじさんとかは、まことしやかに囁かれていたが、そこら辺のことは割愛する。
機械や電化製品が魔法の代わりになっていたことなどを、ウィルに協力してもらいつつ説明。するとお義父さんが、元の世界の電化製品を再現してもらえばいいのに、と首を傾げた。
「っ……冷蔵庫! 冷蔵庫は欲しい!」
「あぁ、前に言ってたな」
「聞く限り、ヨルゲンが好きそうだけどねぇ?」
どういう作りなのかあんまり分かってないから、説明できる気がしないけど、おじいちゃんの理解力ならサクッと作ってくれそうな気もする。
「帰ったら、頼んでみようかなぁ」
「ん」
冷蔵庫、出来上がったらなに作ろうかなぁ。ちょっと凍りかけのムースとか食べたいなぁ。あれ、美味しいのよね。まぁ、ウィルに頼めば簡単に出来るんだろうけどね。
遠慮とかじゃなくて、ウィルがいないとなにも出来ない、みたいなのは嫌だから、あまり安易に頼らないようにはしてるけど。ウィルはすぐ甘やかすからなぁ……。





