18:キャッキャウフフ
四人で波打ち際までわーっと走って行ったものの、フォン・ダン・ショコラたちが海に入る直前でピタッと止まった。
「うみ」
「みず」
「いきてる」
もしかして、波の動きが生きているように見えて怖い、とかなのだろうか。
「「すごい!」」
――――なんだ。
よかった、感動してたほうだったらしい。
耳をピルピル、尻尾はブンブンと動かしながら、引く波を追いかけ、寄せる波から逃げ、泡立つ波際を踏んで遊んだりと、フォン・ダン・ショコラたちは大興奮だった。
「まだ入らないのなら巻いとけ」
ゆっくりと歩いてきていたウィルが、後ろから抱きつくようにして私の腰にパレオを巻いた。
「ありがと」
「魔界ではそうでもないが、人間界でこういった水着はないよな?」
「ないわねぇ。薄手のワンピースみたいなのが水着って呼ばれてるのよね。あんなんじゃ泳げないわ」
「……はぁ」
大きな溜め息を零すウィルに「どうしたのよ?」と続きを促すと、更にぎゅっと抱きしめてきた。
「ルヴィの水着姿に釣られたが…………他の男にも見られるんだということを忘れていた」
なによ、ウィルったら。めちゃくちゃ可愛いじゃないの。あと、浜辺にいるの豹顔の獣人さんと、人魚というより魚人系の種族の人とかなんだけど。個人的には異性は感じられないんだけど、ウィルたち魔族にとってはあまり関係ないらしい。
「そんなことより、泳ぐわよ!」
ウィルの手を引っ張って海に入ると、大きな波が押し寄せて、ザッパンザッパンと波に揉まれた。
「ミネルヴァ! だい――――」
「あははははは! 楽しぃぃ!」
前世で水泳選手だったとか、サーファーだったとかではないけれど、夏や海という言葉を聞くと、なんでか泳ぎたいっ! となる。友だち数人で海に行ったりして遊んだような映像が脳内にあるから、きっとそのせいなんだろうなと思う。
あと、海って彼氏との定番デートみたいなイメージもあるから、ウィルと来たかったんだよね。
「ウィル、何か言った?」
「いや、楽しそうで何よりだ」
ちょっと困ったように笑うウィルの顔に、パシャリと海水を掛けると、軽くキレられた。
恋人同士はこうやってキャッキャウフフするのだと教えると、何が楽しいのかと首を捻ってきた。
「もぉっ、ウィルとは遊んであげない。フォン・ダン・ショコラ!」
三人に声をかけ、こちらを向いた瞬間にパシャリと水を掛けると、三人ともキャーッと叫んで大喜びしてくれた。
そうそう、これが見たかったのよね!





