14:息子さんをください
さあどうぞと前のめりになって、ウィルの幼いころの話をしてくれと促した。ウィルのお父さんはクスクスと笑いながら、ウィルを見て「いい人と出逢えたんだね」と更に笑みを深めていた。
「そうだねぇ……妻のことは、聞いているかい?」
「ええ。心を病まれて十歳のころに、と」
「うん、そうなんだ――――」
でも、ウィルが本当に幼かったころは、ちゃんとお世話できる日もあったらしい。お乳をあげたり、喃語を話すウィルと楽しそうに過ごしていたんだとか。そして、ウィルが一人で立ち上がった日は、涙を流して喜んでいたそう。
心が落ち着いている日は親子三人でピクニックも出来ていたんだよ、と教えてくれた。
幼いころのウィルはそれでも淋しかったんだろうけど。僅かな時間だとしても、ちゃんと親子の触れ合いが出来ていたんだなとホッとした。
「クラウディアは、ウィルフレッドが強い魔力を持っていると知って、ずっと言っていたよ。どうか魔族にも人々にも優しく、いつか素敵な奥さんを見つけて、幸せに暮らして欲しいと。あと、私をお義父さんと呼んであげてと――――」
「だから、捏造するな」
「まってまって! どこが捏造なの!? どこから? え、どこまで!?」
ウィルの胸ぐらを掴んでガクブルと揺らしてしまった。
「やめろ、茶が溢れる」
「あはははは! 最後の部分は私の本音が漏れただけだよ」
なんだ。お義父さんって呼んでほしいだけか。そういえば手紙にも書いてあったわね。
「お義父さん」
「っ、ん?」
居住まいを正して、お義父さんに向き直る。
「息子さんをください!」
深々と頭を下げて頼み込んだものの、辺りがシーンとなってしまった。いや、フォン・ダン・ショコラたちがクッキーをザクザク食べている音は聞こえるけども。
「ふ、くくくくくっ!」
「へ?」
「あーっははははは!」
ウィルをちょっとだけ壮年にしたような見た目のお義父さんが瞳を潤ませて、爆笑しだした。お義父さんの視線が私の横の方に行っている。
何事かとウィルを見て納得した。
ウィルの顔が真っ赤だった。耳はもちろん、手まで赤い。こんなに照れているウィルは初めて見た。
「ミネルヴァちゃん、ウィルフレッドはもう、君のものだよ。ふふっ。ウィルフレッド、本当にいい奥さんと出逢えたね」
「チッ…………あぁ」
舌打ちはしていたものの、ウィルの表情も柔らかくなっていて、なんとなく久しぶりに会えたお父さんを前にして、ツンツンしてただけなのかもしれないなと思った。まぁ、それを本人に言ったら全力否定のちアイアン・クローされそうな予感満載なので黙っておくけれども。
「親父」
「なんだい?」
「しばらく泊まるから、部屋を用意しておいてくれ」
ウィルがそう言った瞬間のお義父さんは、真夏の向日葵のように笑っていた。
お義父さんに会いに来られてよかった。ってことで、ウィルの小さい頃の話をはよ! と促したが、ウィルによって阻止された。
五日ほど滞在予定なので、その間にチャンスを見つけて聞き出さねば。





