11:出発…………は!?
聞くところによると、ウィルのお父さんがいる観光地は、高速移動馬車が通っており、二時間ほどで到着するらしい。時間だけ聞くと、結構近いじゃん? と思うが、高速移動馬車の移動速度が尋常じゃないのでそう思うだけだった。
お客さんたちに聞いたところ、馬車は色んな町に停まるらしいので、気になったところで降りて観光しつつのんびり行ってお昼過ぎごろに着ければいいかな、なんて考えていた。
ウィルに何時に出るんだと聞かれて八時と答えていた。
バカンス用の服に着替えて、フォン・ダン・ショコラたちの荷物を最終チェックし終え、玄関から出ようとしていたら、ウィルが不思議そうな顔をしていた。
「どこか行くのか?」
「はい? いや、だから、お父さんとこに……」
「なんだ。ほら掴まれ」
ウィルにぐいっと腰を抱かれて頭にはてなマークを浮かべていると、フォン・ダン・ショコラたちが私やウィルにガシッと掴まってきた。
「ん」
ウィルがそう言った瞬間、目の前が真っ白になり、パチパチとまばたきしたら、知らないお屋敷の中にいた。
「……は?」
「ほら、着いたぞ」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
「うるさっ……なんだ?」
ウィルに腰を抱かれたまま叫んだので、ウィルの鼓膜にダイレクトアタックだったらしい。それだけで済んでるんだから文句言うな。
私は、観光するために店を休みにしたんだよ!
ぶっちゃけ、お父さんへの挨拶はついでだったんだよ!
買食いを、したかったんだよ!
キャッキャうふふをしたかったんだよ!
腹の底から声を出し、力の限りの眼力を携えて訴えた。私の休暇計画をおじゃんにしやがって、と。あとここどこだ。
「……すまん。親父の屋敷の玄関ホール」
「ダイレクト訪問! しかも早朝に!」
「お……起きてくるまで、海岸通りの市場を散策するか? 朝市やってるぞ。なっ?」
ウィルが珍しくタジタジとなっていたので、私の本気度が伝わったのだろう。代替案を出してくれたし、今回は私の確認ミスという問題もあった。許してやろうと思っていた。
「ふぁー……やぁやぁ、早い到着だねぇ」
玄関ホールの奥にある二階へ続く階段の踊り場に、ウィルと同じ角が生えた男の人がいた。
紫濃いめの赤い瞳と、ウィルと同じ白銀で前下がりの肩上ぱっつん、前髪は右側長めのアシンメトリーヘアー。
おしゃんてぃな髪型の……………………お兄さん?
「親父だ」
「若っ!」
ってか、マジでダイレクト訪問になっちゃったじゃん。やっぱりウィル、許すまじ。この報いは絶対に、絶対、絶対、ぜーったいに受けてもらう。
この一週間、甘やかしまくってくれないと、許してやらないからな! と決めた。





