10:仲直りとリュックの中身
フォンの思いを聞いて、成長を知り、ちょっと嬉しくなった。
ひとまず、言えることはまだまだ出ていくとかは考えないでほしいという気持ち的なことと、まだ外に出せないんだけど!? っていう現実的なこと。
「なるほど、だから自分たちで出来る、ってあんなに言ってたのね」
出来てなかったけども。チャレンジは大切だもんね。
「うん」
「ふぉん、ごめんね?」
「ううん」
またウルッとなってきているフォンの頭を、ショコラがよしよしと撫でてあげていた。ダンはフォンの顔をハンカチでゴシゴシと擦ってあげている。
「こんどは、ちゃんとやる。なくな」
「ゔんっ」
うんうん、微笑ましいね、仲直りだね、って頷いたところで、実は一番気になっていたことを聞いてみることにした。なんとなく予想はついているんだけど、返答次第ではペナルティを考えたいから。
「ところで、ダンのメリケンサックってどうしたの?」
「ヒヨルドがもってるの、ほしいっていったら、くれたぞ!」
――――やっぱりか!
なんとなくそんな気はしていたのよ。ちょっと見せてとお願いして見せてもらったら、銀色に塗られているものの、金属じゃなくてゴムみたいな質感だった。
「ここをギュッギュッてにぎると、ちからつくんだってさ!」
しかも、握力増強に使っているだけだという、予想外の回答に、ペナルティなのかちょっと悩ましくなった。
ダンのベッドに座っていたウィルをちらりと見ると、フッと鼻から息を吐き「ペナルティでいいだろ」と口の端を上げた。
「さて、気を取り直して! リュック見せてごらん!」
リュックの中身を検査することにしたのだが、ダンのリュックはおもちゃと謎の武器がまだ入っていた。フォンが止めていたけど、目を盗んでコソコソ入れていたんだろうな。
ショコラのリュックには、なぜかいつも使っているタオルが入っていた。
「あのね、まくらにかけるとね、よくねむれるの!」
「なぁるほどぉ」
それなら私たちの荷物に入れておいてあげようかと提案すると、思いのほか喜ばれた。そして、ダンがそれならオレの武器もとか言い出したので、却下した。
「まずはフォンが指定したもの入れるわよ!」
「「はーい」」
ハンカチと財布、おやつと落書き帳と色鉛筆と絵の具と…………おや?
なんかフォンが指定したのも微妙だぞ? とは思ったものの、いったん横に置くことにした。
水筒は当日に入れるんだと笑顔で言われたので頷いておいた。
絵の具は後片付け的な大変さがあるので諦めてもらいつつ、少しスペースは残っていたので、あとは好きなものを入れていいと伝えると、各々何を入れようか悩んでいた。
ここで大人の悪知恵を授けようと、悪魔ルヴィちゃんが立ち上がった。
「ちなみに、リュックに余裕を持たせておくと……」
「「おくと?」」
「お土産を買ったときに、入れられます!」
仁王立ちで腰に手を当てドヤ顔で言うと、フォン・ダン・ショコラたちが世紀の大発見レベルで大喜びしてくれた。
ふはははは、旅マイスター(自称)のルヴィちゃんをなめてはいけないのだよ! ウィルは、後ろで溜め息を吐き出すんじゃありませんっ!