9:フォンの思い
フォン・ダン・ショコラたちの部屋の片付けが終わり、三人に座るよう伝えると、それぞれのベッドにちょこんと腰掛けた。
三人の部屋はベットが三つ横並びに置いてあり、その間にそれぞれの学習机のようなものを置いている。
普段はそれで問題ないのだが、いまは妙に距離をとっているようなよそよそしさが生まれてしまっていた。
「フォン・ダン・ショコラ、床に座ろうか」
率先して床に座り、ぽんぽんと両サイドの床をたたくと、おずおずといった感じで三人が輪になるように座ってくれた。ウィルは真ん中にあるダンのベッドに座り、少し距離を置いて私たちを見ることにしたらしい。
「さて、まずはダンとショコラ。謝れてえらかったわね」
二人の頭を撫でると、耳を横に倒して鼻先を少し上げるような仕草をした。こういうところはケルベロス型の時と変わらないのよね。
「フォン、なんであんなに怒ってたの?」
話せるだろうか? 感情的になっているときって、思考がまとまってないこともあって、気持ちを話すのって凄く難しいんだけど。
「えっとね、はじめてみんなでりょこうでしょ?」
「うん、そうだね」
「ルヴィちゃんとあえてね、ほんとうにしあわせなの」
「うん、私もだよ」
気持ちはめちゃくちゃ嬉しい。私もフォン・ダン・ショコラに会えて心からよかったって思ってる。ただ、それと今回のケンカがどう繋がるんだろうか。
「いつかね…………」
「うん?」
「いつか、まおうさまとルヴィちゃんに、こどもができたらでていかなきゃだから、おもいでいっぱいつくりたいの」
――――子どもぉ!?
いやまぁ、そりゃいつかは出来るかもだけど、そこら辺はウィルがなんやかんやをなんやかんややってるから、まだまだ準備期間だとは思うんだけど。
というか、なぜ出て行く気満々なんだろうか。
「ボクたちがつかってるの、こどもべやだもん」
「おあー、確かに!」
店舗併設の家だから、ここから引っ越すつもりは更々ないのよね。右隣の民家は老夫婦が住んでいて、左隣は何やら怪しい薬店。いつもクローズの看板が出ているけど、人はいる。近所の人には人見知りだから、無理に挨拶しなくて大丈夫だとは言われていた。
まぁ、つまりここはリフォームしたり増設も難しい物件である。ただ、三階建てにするのもありだろうとは思っている。三階まで階段で登るのがダルいので、極力なしの方向性でいたくはあるんだけど。
「だから、ちゃんとじぶんたちでできるよって、ルヴィちゃんにみせたかったのに……」
フォンがまた鼻をスンスンと鳴らし出した。
小さいながらに、色々と考えてくれていたことに感謝するとともに、感心もした。言葉はまだまだ拙いところがあるものの、出会ったころよりも成長してるんだなと。