この世は地獄
ただ僕は幸せになりたいだけなのに、どうして世界はそれを認めてくれないの?
なんで僕だけがこんなに苦しい思いをしなくちゃいけないの? 僕のことを見てよ! 誰か助けてよ! もう嫌だ! 消えてしまいたい! いっそこのまま死んでしまいたい! そんな時だった。あの人が声をかけてくれたのは……
「お兄さん、死にたいなら俺が殺してあげようか?」
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中で何かが弾けた。そして気が付けば僕はその人に助けを求めていた。
「殺してください」と……
その人は笑っていた。まるで悪魔のように、でも、どこか天使のような優しさも感じた。
そう思ったのも束の間、僕の意識は深い闇へと落ちていった。
最後にその悪魔か天使かわからないものに感謝を述べていた。
「君は生きるのを放棄しているクソ人間だ、君みたいな人間には地獄を味わってもらわなきゃ」
生きることを放棄した人間は天国へも地獄へも行けない、君は生きてることを幸せだと思わないのか?
こんなところで朽ちていくのか? いい加減目覚めろ、世界は残酷なんだよ!!
年々この世界では自殺志願者が続出している、自分たちが如何に恵まれてるか知らずに、君たちみたいな甘えん坊を見ると吐き気がするんだよ、今から地獄なんて生ぬるい空間より、もっと恐ろしい空間に連れてってやる
そう言われると僕は、その人に別の空間に引きずり込まれた。
「うわあああああああああああああああああああああ」
ここは、僕の昔の記憶??
「そう君の精神的トラウマのみが詰まった世界、ここでしばらくすごすんだな」
そう言うとその人の声は聞こえなくなった。
これはいつの記憶なんだ?? 僕は何回死んだんだ? 僕が死ねば死ぬほど周りの人たちは傷ついてしまうんだ……
ごめんなさい、みんなごめんなさい、僕はバカです、こんな簡単なことにも気づかないなんて……ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい、僕なんかのためにあなたたちの人生を奪ってしまったことを謝ります。どうか許してください、本当にごめんなさい、どうか僕を許してください、こんな最低なやつだけど……どうかお願いします……
あぁ、ダメだ、また意識が遠くなっていく、目の前の景色が崩れ始めた。
「待ってくれ!」
必死に手を伸ばすが掴むことはできない。崩れ行く視界の中、誰かの声が聞こえる。
「まだ生き返れるチャンスがある、だから諦めるな!!」
その声を最後に僕の体は粉々になった。
どうせ無理だよ、もう遅いんだよ、僕の体は完全に消滅したのだ。
僕はこのまま消えるんだろう、そう思って目を閉じた。
だがその時だった。何か大きなものが僕に触れたような感覚があった。それはとても暖かく優しいものを感じた。そして何かが僕の中に入ってくるのを感じると、突然、体の奥底から力が溢れてきた。
(なんだこれ?)
するとどこからか不思議な力が流れ込んでくる、そして僕の体が光に包まれた。
(眩しい)
僕は思わず目を瞑った。光がおさまるとそこには一人の青年がいた。
「ん?」
「おめでとうございます、見事あなたの願いは叶いました」
「え?」
どういうことだ?さっきまで僕は消えかけていたはずなのに、まさかこれもあの人のおかげなのか?それにしても今の状況は一体なんなんだ? とりあえず、状況を整理するため辺りを見渡してみる。
「あなたは今生きたいと感じている」
「あ...」
「そうです、あなたはこの世界が地獄かと思っていました、でももっと地獄は他にあるのです、あなたは恵まれてる、その命無駄にしないでください」「君はいったい誰なんだ?」
「私は神です」
「神???」
神様を名乗るその少女は僕に向かってこう言った。
「そう、私こそがあなたたちをこの世界に呼んだ張本人です」
「じゃあ僕は死んでなかったってこと?」
「そうです、あなたは世界に絶望して死ぬことで逃げようとした愚か者そんなあなたに天誅を下しました」「そうですか」
やっぱりそういうことだったのか、僕はずっと生きたかった、それがたまたまこのタイミングで叶ってしまっただけなのか……
「あなたはなぜ死のうとしたんですか?」
「孤独で辛くて泣きたくて、ただ死にたかったんです、今の自分が恵まれてると気づかず、甘えてました」
「なるほど」
「あの、これから僕はどうすればいいでしょうか?」
「特に何もありませんよ、普通に生活してくれればそれで大丈夫です」
「そうなんですね」
「それとあなたを元の世界に戻すにはもう少し時間がかかります、それまでここに居てもらうことになりますがよろしいですか?」
「はい、構いません」
「では、今日はもう疲れたでしょう、ゆっくり休んで下さい」
こうして僕は元の世界での生活に戻った。
だが戻った世界は以前とは全く違う世界になっていた。そしてそれからの日々はとても楽しかった。新しい友達ができ、学校に行くのも楽しくなった。今まで気づけなかったことをたくさん学んだ。勉強の大切さ、仲間との絆、そして生きるということの意味など……
僕はあの時、この世界に呼ばれて本当に良かったと思っている。こんな素晴らしい世界を教えてくれてありがとう、心の底から感謝している。
僕はこの世界が好きだ!だから、この世界はいつまでも平和であって欲しい、争いごとは起きて欲しくない、どうかお願いします、神様どうかこの世界を平和にしてください!!
僕はこの世界でもっと生きたいと思った。
僕より恵まれてない人間はもっといるし、僕はまだまだ死なないし、死ねない。 だって
この世界は楽しいから、幸せだから、もっと楽しみたいから、生きていたいから、だから死なない。
僕を呼んでくれてありがとう。神様。
と言うように神様に呼んでもらいたかったな...
僕は静かに屋上から飛び降りた。
この世は地獄。