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一話 憂鬱の女子大生

10年以上前に書き上げ、己の恥部だと思いお蔵入りにしていた小品(短編小説)の数々を、思うところあって投稿しようシリーズ(自分で勝手にやっているだけ...)第六弾。


 こちら、ウェブ小説には合わないと思いますが、よろしければご覧になっていただければ幸いです。

 というわけで、読んでいただいた方に、ほんの少しでも何かが伝われば、作者として幸甚の極みです。

 いい事なんてありゃしない♪

 いい事なんてありゃしない♪



 とりあえず行っている大学。

 それなりに勉強して、なんとか中の上ぐらいの大学に入って三年目。

 そろそろ頭に就活がちらついてきて、それと同時に、今までもずっと抱えていた想いが溢れてくる。


 ただなんとなく生きているだけ。

 つまらない、虚しい。

 自分がどんどん下らなくなっていくだけ。


 そんな想いがいっぱい溢れ出してきてどうしようもなくなる。

 けれど私は無駄に真面目なところがあって、それでも大学にはちゃんと行ってバイトも休まないで、友達にもいつも通り振舞っている。

 そして酷く疲れる。


 五月の晴れた、春というより夏のような暖かさの今日。

 朝から憂鬱で、誰にも会いたくない、そんな気分。

 いつもはとりつくろい上手の私も、今日ばっかりは朝、友達に会ってもそれをごまかせず「カナ、今日元気ないね、それとも五月病ってやつ?」などと言われ、少し焦りながら強張ったまま微笑む。

 五月病。

 そもそも私は年がら年中五月病みたいなもの。

 五月病?と冗談で言われて、なんだかとても淋しい想いが私を襲う。


 お昼、友達と五人でパスタを食べに行き、この天気と気温のせいか、みんないつもよりも元気に感じる。

 私は寂しさやら虚しさやら、とにかく憂鬱で仕方なかったけど、またさっきみたいに五月病なんて言われないように、場を盛り下げないように必死に楽しくしようと努める。

「カナ、いつものテンションに戻ったね」と言われて、ほっとした。

 いつも通りにとりつくろえた。

 でも、そうすればする程寂しく、悲しい気持ちになる。


 午後の授業も終わり、もう今日は誰にも会わず一刻も早く帰りたいけど、またそういう日に限ってバイトがある。

 もうエンジンはほとんど切れかかっていたけど、それでも必死にとりつくろってなんとかバイトを終える。


 帰りの電車の中。

 少し頭が痛い。つり革に掴まり立ったままうつむく。

 そんな状態なので周りの動きに気づけず、無理矢理降りようとした横暴な中年男性に突き飛ばされる。

 カバンからスマホが飛び出して、それを近くに座っている女の人が拾ってくれて、軽く頭を下げる。

 なんで通してくださいって口で言ってくれないのかな、という怒りと、失態を見られたような恥ずかしさと、強烈な寂しさと悲しさで、思わず泣き出しそう。

 それから降りる駅までずっと、泣きそうな気持ちを必死で抑えた。

 もう何もかもが嫌な気分。


 家に帰りシャワーを浴び、軽くご飯を食べて、自分の部屋に入るなりベッドに崩れ落ちる。

 うつ伏せのままいっそ泣きつくそうと思ったけど、なぜかほとんど涙は出ない。

 辛くて苦しいのは確かなのに。

 今日は本当に疲れていて体はぐったりなのに、妙に目が冴えて、色々な事が頭の中を駆け巡り、全然眠る事ができない。


 朝になる。

 もうこんな時間。

 結局ほとんど眠れないまま学校に行く。

 疲れている。今日はさすがにとりつくろうも何もないという感じ。

 でもなぜかこういう時程、いつもは周りばかり気にしている私も、疲れで鈍っているせいか変に度胸があるような、体はしんどいけど、精神的にはむしろいつもよりも楽な気がする。

 今日はバイトもなく友達とどうこうもない。

 4限までの授業を終えてすんなり家に帰る。

 すぐに自分の部屋に入り、ベッドで横になりながらうとうとと、つけっぱなしのテレビをぼんやり眺めている。



 誰にもわかってもらえない

 その涙も ポツンという音にかき消された

 いい事なんてありゃしない 

 悪くなるばかりだ

 いい事なんてありゃしない 

 何にもないのさ♪

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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