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第58話 作戦概要

「ロピアのパフェ買ってきたぞ~」


 部屋に入った俺が袋を持ち上げて見せると、エリカ、ヒナギクさん、中野さんの3人がそろって俺に顔を向けてきた。

 話し合いがちょうど終わったいい感じのころ合いみたいだ。


(よしよし、気づかいをして正解だったな。さすが気づかいのできる男だ、うn)


「ではトール。パフェを食べながら今後の方針を簡単に説明しましょう」


「あ、じゃあ私は紅茶をいれますね♡」


 中野さんが高そうな茶葉の入った、お洒落なデザインの透明ティーポットにお湯を入れていく。


 俺の部屋にそんなこじゃれたアイテムはないので、中野さんが自分の部屋から持ってきたものだろう。


 俺の部屋で、現役女子大生・人気アイドル声優の中野明菜がマイティーポットで紅茶をいれてくれる。

 こんな非情時だっていうのに、これ以上ない幸せを感じてしまうアニオタ脳が辛い……。


 中野さんが紅茶をいれるのを待ってから、俺はパフェを食べつつ超巨大隕石アーク・シィズ迎撃作戦の概要を聞かされた。


「今回の作戦の肝はわたしの持つ、動いている物の進行方向を変える『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』です」


 エリカがちょっと自慢げに言った。


「ああうん、エリカが来た日に一回だけ見せてもらったあの特殊能力な。飛んできたティッシュの箱の軌道を無理やり曲げたやつ」


「はい、あれです。あれで超巨大隕石アーク・シィズの軌道を地球への直撃コースから逸らします」


「おおっ! そういうことか! なるほど納得、いいアイデアじゃないか」


「わたしの『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』は、相手の質量や体積に関係なく動かせますからね。わたしにかかれば超巨大隕石だろうがイチのコロですよ」


「さすがエリカだな。エリートは伊達じゃない!」


「いえいえそれほどでも……ありますよ。ふふふん、トールに褒められてしまいました」


「今日だけはどんだけ自慢してもいいぞ。なんてったって救世主エリカ様だからな」

 世界は無事に救われると知った俺が、手放しでエリカを褒めていると、


「しかしながらこれには一つだけ問題点があるのですわ」

 ヒナギクさんが一言そう付け加えた。


「問題点?」


「超巨大隕石アーク・シィズが地球に近づきすぎると、少々軌道をずらしても再び地球の重力に引かれて落ちてきてしまうのですわ」


「ええっと……つまり?」


「地球の重力圏に囚われる前に、軌道を変更する必要があるということですの」


「ぐ、具体的に言うと?」


 ヒナギクさんが優しく説明してくれるんだけど、俺の脳はイマイチ話を理解できないでいた。

 さっきの話し合いに参加しないでおいたのはやはり正解だったようだ。


「具体的にはエリカさんには宇宙に行ってもらい、宇宙で『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』を使ってもらいます」


「エリカを宇宙に!? っていうかどうやって!?」


「日本政府とJAXAが共同で極秘裏に開発していた、惑星探査用・次世代有人ロケットの試作五号機『H4X-105おおとり』を使いますわ」


「有人ロケットって言うとスペースシャトルとか、最近だと民間のスペースXとかのことだよな?」


「広義では同じですわね。ですがスペースシャトルはもう現役を引退して久しいですし、比較的高度の低いなんちゃって宇宙に人や物を運ぶことを目的に作られた民間商用ロケットでは、目的地点まで到達することができません」


「そうなんだ」

 一言で有人ロケットって言っても色々あるんだなぁ……。


「ですが惑星探査用である『H4X-105おおとり』なら重力圏の外にまで届かせられるのですわ」


「日本がこっそりとそんな物を開発していたことに、何よりもまず驚きなんだけど……」


「宇宙空間はサイバー空間と並ぶ21世紀の新世界、フロンティアですわ。米中ロを中心に覇権争いは既に始まっており、日本政府としても指をこまねいてみているだけではいられませんから」


「大まかな話は分かったよ。じゃあその『H4X-105おおとり』ってのにエリカを乗せるってことだな。それで地球の重力に引っ張られる前に、エリカの『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』で超巨大隕石アーク・シィズの軌道を逸らすと」


「ですわ」


「それで世界は救われる?」

「はい」


「そうか、良かった……世界は滅亡の危機から救われるんだ」


 その言葉を聞いて、俺は心の底から安堵していた。

 俺が無能な一般人でも、しかし俺の側にはエリカというとてもつもなくすごい女の子がいてくれたのだ。

 俺はそのことに心から感謝していた。


 ――だから気づくことができなかった。


 なぜこの話をするのに俺に席を外させる必要があったのか。

 なにより『H4X-105おおとり』が試作機だとヒナギクさんが言ったその意味を。


 そのことに、本当にどうしようもないバカでアホの30代無職童貞の俺は、気づくことができなかったのだ――

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― 新着の感想 ―
[一言] まさにアルマゲドンみたいな自己犠牲の話になっちゃいそう… 帰ってくることができるんでしょうか。
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