第54話 36時間後に世界滅亡
「ええっと……ドラマの話? まぁ玄関で立ち話もなんだしとりあえず入ってよ」
俺は中野さんを部屋の中に招き入れた。
すると、
「はふ~~、今日もトールは朝早くから人気者ですねぇ……。それはそれとして、どちらかというと映画じゃないですか?」
眠そうな顔を隠そうともせずにぽわぽわした足取りでやって来たエリカが、俺の背中をちょいちょいと突つきながら言ってくる。
「あ、確かにそうかも。ドラマよりハリウッドの2時間映画って感じの方が近いな」
「でしょう?」
エリカの言葉に、俺は妙なところですごく納得していた。
かゆいところにちょうど手が届いた感じだ。
「それで映画がどうしたんだ? 中野さんのお勧めの映画でもやってるのか? もしかして中野さんが日本語の声を当ててたり? だったらすぐにでも観てみるけど」
俺はファンの鏡のようなセリフを言ったんだけど、
「教祖様、これは映画じゃなくてリアルの話なんです」
中野さんはこれ以上なく真面目な顔でそう言ってくるのだ。
「って言われてもなぁ? リアルに36時間後に世界が滅亡するとか言われても、なんていうかあまりに現実感がなさすぎるっていうか……」
「でも事実なんですよ。確かな情報筋から得た情報なんですもん」
「ちなみにその確かな情報筋ってのは?」
「環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』の幹部候補であり、在日米軍司令官を務めているファルケ・メッサー中将ですね」
「ブフゥッ!」
思わず吹いただろ!?
在日米軍司令官って、日本にいる在日米軍のナンバーワンじゃねぇか!?
そりゃ確かな情報筋だわ!
米軍って言や世界の警察官とも言われる最強の軍隊だぞ!?
もはや確かすぎて怖いレベルだよ!
環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』、マジでやばすぎだろ!?
「あ、一応オフレコでお願いしますね。メッサー中将が教団のメンバーであることはトップシークレットなんですよ。教祖様だから教えましたけど」
「ああうん、もちろん分かってるよ。俺も在日米軍なんてところに睨まれたくはないからな」
在日米軍とか、どう考えても30過ぎ無職童貞が太刀打ちできる相手じゃない。
在日米軍vs30過ぎ無職童貞。
右と左がアンバランスなんてもんじゃない。
例えどんな強力な主人公補正がかかったとしても、絶対に勝負にならないであろうことは明々白々だった。
無理ゲーにもほどがある。
とまぁそういう感じで、俺はイマイチ中野さんの話に本気になれなかったんだけど、
ピンポーン。
再びうちのインターホンが鳴って、今度はヒナギクさんがやってきた。
まだ朝の5時過ぎだ。
こんな時間に何の用でやってきたのか、今さら俺が問いかける必要もないだろう。
事実、俺が何を言わなくても、
「おはようございます。あら、朝も早くから皆さんお揃いのようですわね。ということは、既に話は聞き及んでいると思っていいわけですわね?」
なんてことをヒナギクさんの方から言ってきたのだから。
「つまりヒナギクさんは、この世界が36時間後に滅亡するって話をしに来たってことでいいんだよな?」
それでも俺が一応念を押すように尋ねると、
「やはりもうご存じでしたか。そしてここに中野さんがいるということは、情報源は環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』ですわね? さすがの情報網といったところでしょうか」
ヒナギクさんは少し苦笑しながら答えた。
「お褒めに預かり光栄です」
そしてまんざらでもなさそうに頷く中野さん。
「えっと、その言い方だと日本政府も、環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』の情報網の全容を把握はしていないのか?」
「日本は強大な力を持った独立した情報機関を持ちませんからね。アメリカ政府や米軍の深部にまで食い込んでいると言われる環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』相手に、情報戦で競っても勝ち目はありませんわ」
軽く肩をすくめながら答えるヒナギクさん。
ヒナギクさんは金髪美人のお姉さんなのでそれがすごく様になっている。
まるでハリウッド女優みたいだった。
やばい、惚れそう。
でも米軍の深部どころか、在日米軍トップまでメンバーなんだよなぁ。
もし言ったらマジで米軍に暗殺されそうだから絶対に黙っていよう……。




