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第47話 環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』

「さっきのヒナギクさんの話ってガチでマジな話だったんだな……ってことは本当に目的は俺だったってことなのか? エリカじゃなくて?」


「もちろんです。我々の目的はただ一つ、異世界召喚を行いうるトール様を我々の教祖としてお迎えにあがることですから。召喚された方には特に興味はありません」


(ふへぇ、俺たち一般国民が知らないだけで、この世界では色んなことが起こっていたんだなぁ……)


 などと、俺がなんとも言えない微妙な感慨を抱いていると、


「失礼な! わたしとトールはもはや一心同体、既に運命共同体と言っても過言ではない間柄ですよ! 見くびってもらっては困ります!」


 なぜかエリカが憤慨した様子で横から口を挟んできた。


「おいこらエリカ、あることないこと過剰に粉飾して言ってるんじゃありません」


 ――という俺の言葉はしかし二人に無視されてしまった。


「な、なんと! それは失礼いたしました! どうか平に、平にご容赦を!」


「分かればよろしい。以後気を付けてくださいね。ちなみにわたしの名前は遊佐エリカです」


「かしこまりました、教祖トール様の運命共同体でありますならば、これからはエリカ様とお呼びいたしましょう」


「はい、そのように」


「いやあの、勝手にそういうことにされると困るんだけど……」


「おや教祖様、なぜそのようなことを仰るのですか? まさか今のはエリカ様の真っ赤な嘘で、我々をたばかろうとしていたと?」


 さっきまで完全スルーしてたくせに急に俺の発言を拾ったリーダーの男。

 そのの目がキラーンと妖しく光った気がした。


 も、もしここで俺が嘘だと言うと、エリカになんらかの危害が及ぶかも……?

 そう考えた小市民かつ小心者な俺は、


「いえ本当です、エリカの言ったことは全て正しいです。エリカが俺の運命共同体なのは紛れもない事実です」


 エリカの身の安全も図るためにも、そう言うしかなかったんです。


「ですよねトール♪ トールの口からその言葉が聞けて、わたしは嬉しいです♪」


 満面の笑みで微笑んで抱き着いてくるエリカだけど、これ完全に状況を利用して俺に言わせにかかってたよな?


 あわや拉致られそうになるなんていう、わりと緊迫した状況でさらりとこんな策をしかけてくるなんて、エリカが歴戦の策士過ぎてちょっと怖いです……。


「それでえっと、話が逸れたから戻したいんだけど。俺が教祖だとして、それでもあんな暴力的なやり方はよくないんじゃないかな? 拉致は犯罪だぞ?」


「それに関しては本当に申し訳ありませんでした。しかしこのようなことを普通に言っても信じていただけないかと思い、少々強引な手を使ってしまったのです」


「そりゃこんなことをいきなり言われても、にわかには信じられないだろ……?」


 俺はまだ現実と創作物の区別がつくラインでちゃんと踏みとどまれている、ライトなアニオタだからね。


 ちょっと深夜のハイテンションでオリジナルの魔法陣を描いて、ついでにオリジナルのオサレ召喚魔法を口走っちゃうくらいで。


「教祖様を驚かしてしまい本当に申し訳ございませんでした。全ての責任は実質ナンバーワンの私にあります。拘束をほどいていただければ、すぐにでも腹を切り、死をもってお詫びいたしましょう」


「頼むからそれだけはやめてくれな!? リアル警察沙汰の上に、事故物件になって大家さんブチ切れ案件だからな!?」


「しかし教祖様の意に背く行為をしてしまった以上、責任をとるのが実質ナンバーワンの責務というもの。なんなら今すぐにでも舌を噛み切って――」


「オッケー分かった分かった分かった! あんたの気持ちはもう十分過ぎるほど分かったから、死ぬのは無しな!」


「ですが責任者とは、問題が起こった時に責任を取るためにいるのです」


「そんな一般論は今はいいから! お前が死ぬことは許さない、これは教祖の命令だ! 教祖命令なんだから絶対守れよな! 絶対だぞ!」


「な、なんとお優しいお言葉……! このエクスシア、心より感動致した所存です! 教祖様のためなら、この命いつ果てても惜しくはありません!」


「どう見ても分かってないようにしか見えないんだけど、一応分かってくれたんだよね……?」


 本当に心から感動しているからだろう、ついには涙を流し始めたリーダーの男(エクスシアと名乗っていた)。

 でもまぁとりあえず自決の心配はなくなったはずだから一安心かな?


 こういう使命に生きる人って、使命のためならマジで命張っちゃうもんな。

 俺のせいで人死にとか本気で困るんです。


 そんな重すぎる十字架を、30代無職童貞の俺に背負わせようとするのは金輪際やめてほしい。


 いやほんとマジな話。


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