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第38話 金髪ネコ耳メイドさんな女の子

 金髪ネコ耳メイドさんな女の子は、包容力のありそうな癒し系お姉さんといった感じで、くりくりした大きな碧色の瞳が印象的な、エリカとはまた別系統の美少女だった。


 大きく開いた胸元から見える、何でも挟めちゃいそうな豊満でやわらかそうな谷間を、30過ぎの無職童貞な俺は否が応でも意識せざるを得ない。


 ご、ごくり……。


 ま、まぁそれは一旦置いておいてだ。


「えーと、どちら様でしょうか? 俺の知り合いじゃないですよね? そして俺は1人暮らしなんで、人違いじゃないかと思うんですが」


 多分っていうか絶対に俺の知り合いではない。


 こんなアニオタの理想を体現したかのようなアキバ系ネコ耳メイドお姉さんと知り合いだったら、忘れるはずがないもんな。


 よって記憶にないということは、つまり会ったことはないと断言できる。


 見たところ新聞の勧誘や宅配便でもなさそうだ。

 つまり間違えて俺の部屋のピンポンを押した可能性が極めて高かった。


「いいえ、あなたで合っていますわよ、遊佐トール」


「いやそう言われても俺はあなたに全く覚えはないんですが」


「それはもちろん、今この瞬間初めて会いましたもの」


「やっぱ初対面じゃないか」


 人違いだと俺は納得しかけたんだけど、


「ですがわたくしはあなたのことをよくよく存じておりますわ」


 金髪メイドお姉さんはにっこり笑ってそんなことを言うのだ。


「え?」


「それではあなたについて簡単に説明してみせましょう。遊佐トール、出身は兵庫県。わりとどこにでもいる冴えない30代」


「開口一番、いきなりケンカ売ろうとしてるのかな?」


 酷い言われようだった。


 まぁケンカを売られても買わないんだけどね。


 女の子相手に暴力なんて論外だし、そもそも俺は戦闘力皆無で、一緒にアニメを見れば分かり合えると思う平和主義の一般アニオタだ。


 なんならリアル女子とか裏で俺のこと笑ってそうで怖いとか思っちゃうタイプだから、ケンカなんて今までの人生で一度もやったことがないのだった。


 俺のこの手は、人を殴るためにあるんじゃないんだ、キリッ!(アニメ主人公風の心の声)


「いいえまさか、ただの事実の列挙ですわ。ご不快にさせてしまったのでしたら、申し訳ありません」


「さよですか、冴えなくてすんませんね……」


 30代無職童貞が冴えないのは客観的にも明々白々なので、強くは否定できない自分が辛い……。


 くっ、せめて勤め先が倒産してなくてちゃんと仕事をしていたら、普通の30代童貞で済んだのに……!


「では続けますわね。勉強は軒並み苦手で、その中でも特に大の苦手だった英語では、高校で必須だったからしぶしぶ受けたTOEICでたったの334点。そして今現在は、勤め先が倒産して無職、30を過ぎてなお童貞」


「おいこら、人の思い出したくない過去ばかり狙ったようにあげつらうのはやめてくれないか。さすがの俺も怒っちゃうよ?」


「まだまだ知っていることはありますわよ? 持っている資格は普通運転免許証のみ、しかもオートマ限定。父親は著名な考古学者で、優秀な父親に対して少なくないコンプレックスを抱いている」


「……色々と余計なお世話なんだよ」


 っていうか、俺が父親をどう思っているかまでなんで知ってるんだよ?

 週刊文春もびっくりな情報収集能力だぞ、どこ情報なんだよそれ。


「あらそう、それはごめん遊ばせ」


 金髪メイドお姉さんはそう言ってスカートを摘まんで軽く膝を折った。

 いわゆるカーテシーと呼ばれる西洋風のお辞儀だ。


 いかにも外国人といった風の金髪メイドお姉さんがやると、まるでどこぞの西洋貴族のお嬢さまのようでたいへん様になっていた。


「だいたいさ、オートマ限定免許ってよく馬鹿にされるけど、今の時代にミッション車を運転する機会なんてまずないだろ? ってことは運転免許を敢えてミッションで取る方が変なんだよ、むしろオートマ限定こそ時代の最先端をいっているんじゃないか?」


「トラックなどはミッション車がまだまだ主流ですし、海外のミッション率は依然高いですし、なによりクラッチを上手く繋いでギアを上げ下げするのは、意のままに車を操っている感覚が有ってすごく楽しくはありませんか?」


「なんだよクラッチって?」


「半クラとか聞いたことありません?」


「半クラ? えっと、知らないけど……」


 マインクラフトみたいなブロックゲームかな?


「ミッション車を運転するに際して、まず最初に習得が必要なテクニックですわ」


 とまぁそんな風に、俺と金髪メイドお姉さんは世間話(というか俺へのディスり?)をしていたんだけど――。


 しかしなぜか金髪メイドお姉さんは、とりあえず話は終わったとばかりに、ここがまるで自分の家であるかのごとく、ごくごく自然な様子でうちの中へと入ってこようとするのだ。



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