第33話 スマホ ≠ ファミコン
帰宅後、20時ジャストに配達に来た勤勉な宅配業者からエリカ用のマットレス一式を受け取った。
さらには買いこんだ物をセッティングしたりシャワーに入ったりしていると、時間はすぐに経ってしまい、そろそろ寝るのにいい時間になった。
「そろそろ寝るか――あ、そうだその前にスマホを渡しておくよ。俺のお古だけど」
俺はそう言うと、つい先日機種変するまで使っていた古いスマホをエリカに手渡した。
「はぁ……」
両手で大事そうに受け取りながらも、エリカは微妙な顔をしている。
「シムカードは入ってないけどこの部屋はWi-Fiがあるから、とりあえずインターネットは使えるから。外でもWi-Fiスポットがあればいけるし」
「申し訳ありません、わたしの勉強不足のせいでトールの言っている意味がほとんど分からないんです」
「まぁざっくり言うと、機能制限はあるけどぼちぼち普通に使えるってことだな」
「ふむふむなるほど、分かりやすい説明をありがとうございました」
「なんかさっきからあんまり乗り気じゃないみたいだな? スマホは便利だし、暇な時にゲームとかできて楽しいぞ?」
「ゲームというとファミコンですか? これでファミコンができるんですね」
「ファミコン? あー、なんか俺が生まれる前くらいにそんな据え置きゲーム機があったらしいな、名前くらいでよく知らないけど。っていうかほんと詳しいなお前」
エリカより10歳以上も年上の俺ですら、ゲーム機って言ったらプレステとかDSとかスイッチなのに。
「でもわたしはゲームとかは多分あまりしないですかね?」
ふむ、エリカはいまいちスマホに乗り気じゃないようだった。
最近の高校生なんか電車でいつもスマホを睨みながらウマ娘とかFGOとかパズドラをしてるっていうのに、偉いもんだ。
ちなみに俺もご多分に漏れず、通勤の合間にスマホでゲームしたりWeb小説を読んでばっかりでした。
「そっか、エリカはほんと真面目なんだな。あああと、これがあればネットで好きなだけ調べものもできるかな」
しかし俺がついでのように『調べものができる』と言った途端、
「なんですと!?」
エリカが猛然と食い付いてきた。
「お、おう」
「そこのところをぜひ詳しくお願いします!」
「ええっとだな、ウィキペディア――って言っても分かんないか。世界中の色んな知識が集まった何でも載っている辞書サイトがあるんだけど、そこにもアクセスできるんだよ」
「ウィキペディア! 世界中の知識がなんでも載っている辞書サイト! そんなものがあるんですね! スマホ欲しいです! この世界の知識をもっと得たいです!」
「あはは、オッケー。じゃあ簡単に使い方を教えるな」
「はい、ぜひお願いします!」
ほんとエリカってば時々イケイケギャルっぽいところもあるけど、本質的に真面目ちゃんなんだから。
もし本格的に使うようなら、今度家電屋にでも行って最新のスマホで回線契約をしてあげよう。
とりあえずは使えるけど、俺のお古だからだいぶ性能が前のだしシム契約してないしな。
俺はしばらく手取り足取りエリカにスマホの使い方を教えてあげる。
「ふむふむなるほど、そういうわけですか」
ここでもエリカは自頭の良さをいかんなく発揮し、瞬く間に使い方をマスターしてしまった。
でもそうこうしている内に、さすがに本格的な睡魔が襲ってくる。
「ふぁ~~あ……。だめだ、いい加減寝落ちしそうだ……」
「も、申し訳ありません! つい夢中になってしまいました。夜も遅いのに色々教えてもらってありがとうございます」
エリカが嬉しそうに言いながら大きく頭を下げる。
「あはは、俺も喜んでもらえてよかったよ。使い方で分からないことがあったらなんでも聞いてくれな。じゃあ電気を消すな」
幸いなことに俺はベッドだし、エリカのマットレスももう敷いてあるので、電気さえ消せばすぐにでも寝れる状況だ。
「そうですね。わたしももう身も心もコンドームもしっかりとトールを受け入れる準備ができていますので、トールの気の向いた時にいつでもどうぞ。ポッ♪」
しかし若いからかエリカは元気なもので、上目づかいでそんなセリフを言ってきやがったのだ。




