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第30話 放課後JK

「もう5時過ぎか。結構長い時間いたな」


 ショッピングモールの大時計を見ながら、ちょっとお疲れ気味で言った俺に、


「そうですね。新婚生活に必要なものをいろいろ買い込みましたからね」


 エリカが朝から変わらないままの元気そのものって感じで返してくる。


「おいこらやめろ。なにをさらっと既成事実化しようとしているんだ」


「はーい先生、すみませんでした~」


「先生? 俺がか? 急にどうしたんだよ? あとそのアホっぽい話し方はなんなんだ?」


 唐突にちょっとバカっぽい口調で慣れない呼び方をされた俺は、反射的にエリカに聞き返した。


「日本の男性は総じて女子高生が好きなんですよね? だから少しお疲れ気味のトールの元気が出るように、女子高生との放課後プレイを演出してあげようかと思いまして」


「異世界の教育はさすがに日本男児への偏見に満ち溢れていすぎやしないか!?」


「ちなみにわたしがちょっと学校をサボり気味の小生意気な女子高生で、トールはわたしがなんとか進級できるようにあれこれ世話を焼いてくれる30代の担任教師です。そしてわたしは実は先生のことが好きだけど、年齢差と照れがあってなかなか言い出せないでいる──という設定です」


「無駄に設定が細かいな!? しかも童貞のおっさんが好きそうなツボをバッチリ押さえてる感がある!」


「ふふん、それはもう傾向と対策を分析すべく赤チャートを何回も解きましたからね。授業でのロールプレイング実技でも、わたしの設定の作り込み、アーンド再現力に勝てる学院生はいませんでしたから」


「無駄に真剣過ぎる……こんなアホなことに対して、なにがお前をそこまで駆り立てるんだ……」


「わたしはいついかなる時も真剣ですよ。いついかなる時も、全力で真剣にトールを喜ばせたいんです」


「ぬぐっ、アホな話してたはずなのに、エリカはまた不意打ちでそういうことを言ってくるんだから……」


 そんなセリフをいきなり言われたら、心の準備ができてないからものすごくドギマギしちゃうだろ。


「ちなみについでに教えて欲しいんですけど、トールは女子高生は好きですか?」


「……著しくプライバシーにかかわる質問にはノーコメントです」


「もし女子大生のほうが好きならもう少し大人っぽくしますけど」


「そもそもの話、そんなロールプレイはしなくていいんだよ。その……エリカはほら、そのままでも充分、か、か、可愛いと思うし」


「え? なんだって? 申し訳ありません、聞き逃してしまったのでもう一回言っていただけませんでしょうか?」


「とりあえず布団セットは夜8時に届けてくれるはずだから、それまでに適当にメシ食ってから帰ろう」


「露骨に話を逸らしましたね。ほらほら、ケチケチしないでもう一回わたしのことを可愛いって言ってみて下さいよ~」


「バッチリ聞こえてんじゃねーかよ!?」


「えへへ、すみません。トールの口からもう一度可愛いと言ってもらいたかったので、つい」


「まったくお前ってやつは……エリカはそのままでも十分可愛いよ」


 なんていうかその、な?


 エリカが嬉しそうに言ってくる姿を見ると、無下にするのも何だかなと思うわけでだな?


 なので俺がもう一度だけ言ってあげると、


「あ、えっと、はい……ありがとうございます……」


 エリカは顔を真っ赤にしながら小さくそうつぶやいた。


(ほんと、放課後女子高生プレイだのなんだのイチイチ余計なことばっかりしないで、そのまま普通にしていれば、それだけで十分に覇権アニメのヒロイン級の美少女だってのにさ)


「まぁその話はまた後日するとして、ショッピングモールの中にレストラン街があるからそこで何か食べて行こう。今から帰って自炊するのはさすがにしんどい」


「それでしたらわたしが晩ご飯を作りますけど」


「そういうセリフは、炭化しない料理と呼べるものを作れるようになってから言おうな」


「もう先生ってば意地悪なんだし」


「その設定まだ続いてたんだな……」


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