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第27話 ショッピングモール(4)

「いえいえトール、女の子というものは得てして秘密を持ちたがる生き物なんですよ。その相手が、たとえ結婚を誓い合った思い人であっても。女の子は罪深い生き物なんです」


「前言撤――」


「古来より日本では『男に二言なし』と言うそうですね。まさか日本男児であり、さらには異世界を救った勇者たるトールが、前言撤回などと腑抜けたことは言い出しませんよね?」


「ぐっ……」


「もう、そんな実質自転車操業な詐欺の投資話を掴まされて退職金をごっそり溶かしちゃった退職公務員みたいな顔をしなくても大丈夫ですよ。別に取って食おうなんて思っていませんから」


「なんか例えがものすごいんだが……」


 ちなみにだけど、俺の会社に退職金なんてものは存在しなかった。


「本当に、わたしはトールにわたしのことを好きになってもらいたいだけなんです。これだけは100%の本心ですので、そこはどうぞ安心して、心置きなく同棲しちゃってくださいね」


「なんでだろう、同居じゃなくて同棲って言われると、なかなかにプレッシャーを感じるな……」


 これがさっき言ってた踏ん切りがつかない男の気持ちなのかな。


「明日は明日の風が吹く。人生なんて意外となるようになるものです。気楽に行きましょう♪」


「は、話を戻すんだけどさ、幸いなことにエリカが女神さまからもらった持参金があるから、ここはちょっと高いくらいなら気にせず買おうな?」


 このままだとあれこれ既成事実を積み重ねられてしまいそうだと感じた俺は、いったん戦略撤退をすることにした。


 いやほんと、いきなり結婚を前提の同棲とか言われてもですね?

 無職の俺としてはちょっと逡巡してしまうんですよ。


 7億円の持参金目当てに結婚するとか、それもう完全にヒモってことだろ?

 男は女より肉体的に働くことに適した身体を持っている。

 なのに女の子に養われるのはカッコ悪いっていうか。


「じゃあトールが勧めてくれるのでこれにしますね」


「布団カバーの色はどうする? 黒・青・緑の三種類あるみたいだけど」


「トールの布団が青だったので当然、青一択ですね。ペアルック希望です♪」


「イチイチそんなことアピールしなくてもいいから……じゃあ色は青で決まりな。シーツは洗い替えできるように2枚買っておこう。あとは枕か」


「枕売り場は売り場はあちらのようですね。YES・NO枕にしま――」


「しないからな」


 俺は言葉尻に被せるように言うと、枕売り場に向かった。


 エリカはちょっと不満そうな顔をしながら、でも俺のすぐ後ろをついてくる。


 これはあれだな、明らかにわざとそういう顔を俺に見せているな。

 俺に悪いことしちゃったかな、という気持ちにさせる腹づもりだろう。


 既に俺はエリカという女の子を理解しつつあった。


 というかこれだけ明け透けに見せられたら、女の子と仲良くなった経験が皆無の俺でもさすがに分かる。


 そう言う意味ではエリカは本当に裏表ない正直な女の子なんだろう。


 隠しておけばいいことまで、ちゃんと見せて答えてくれるんだから。


 枕コーナーではエリカに実際に試し寝をして、エリカの頭や首に一番合う枕を念入りに選んでもらった。


 寝具の中でも枕は一番快眠に直結するから、枕が合う合わないの確認作業は一番大事な作業だ。


 そしてじっくり選んでからサービスカウンターに行くと、一式まとめて即日配送の手続きをとった。


 市内限定のサービスで、14時までに購入したものなら当日中に届けてもらえるのだ。

 電車で一駅とはいえ、さすがに布団一式を持って帰るのは骨が折れるからな。



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