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第15話 気持ちよく知識マウントをとります。

「エリカ、これはテレビっていう映像と音声を伝達するための道具で、別に中に小人さんが閉じ込められているわけじゃないんだよ」


 初めてのテレビを見て小人さんがいると騒ぐ、こっちの世界にやってくる異世界転移あるあるだな。


 『お約束』とも言う。


 エリカのような美少女がやると本当に可愛らしい。


 もちろんリアルで見るのは初めてだった。

 というか普通はリアルで見る機会はありえない。


 そんな風に無邪気に驚くエリカの姿を見たことで、俺は気落ちが少し軽くなっているのを感じていた。


 まったく、女の子が無邪気にはしゃぐ姿は最強の栄養剤だぜ。


「そ、そうなんですね! テレビですね、覚えました! 勉強になります! うわー、小人さんが喋ってますよ! すごーい!」


「くっ……なんだよお前、そうやってあどけない笑顔を振りまいてりゃほんと可愛いのに……」


 目を輝かせてテレビにくぎ付けになるエリカの姿に、思わず胸がきゅんとしちゃう俺。


 ――と、ピピッピピッ!


 注意を引き付けるような音とともに、画面の上に速報テロップが現れた。


「あ、緊急速報ですよ。なんでしょう、早朝から地震でしょうか? それとも議員の不祥事か、はたまた芸能人がクスリでもやって逮捕されたんでしょうか?」


 エリカが居住まいを正してその文字を注視していた。


 そしてその言動を見聞きした俺は、一瞬で真顔になった。


「…………」


「トール、急に静かになってどうしたんですか?」


「エリカさ、実はテレビのこと知ってたよな?」


「はて、なんのことでしょう?」


「とぼけてんじゃねぇ!? 緊急速報がどういうものか詳しく知ってるのに、テレビを知らないわけがないだろ!?」


「くっ、そこに気付くとはやりますね、トール。さすがこのわたしを召喚した召喚主さまなだけはあります……!」


「しかも芸能人がクスリで逮捕とか議員の不祥事とか、実はかなりこの世界について詳しいよな?」


「そうとも言いますね」


「そうとしか言わねぇよ」


「まぁどっちでもいいじゃないですか」


「あのなぁ、知ってるのになんでわざわざ知らない振りをしたんだよ?」


「それはもちろん、『お約束』だと習いましたので」


「習ったって、こんなこと誰に習ったんだよ?」


「学校の先生からです」


「学校??」


「こう見えてわたしは、選ばれし者のみが入学を許される女神国立転移・転生学院の生徒なんです。しかも入学以来ずっと主席を保ち続け、実際にこうやって異世界転移を成し遂げたオンリーワンにしてナンバーワンなんですから。この世界についての予習復習はばっちりです。見くびってもらっては困ります!」


 エリカがどや顔でそう言った。


「お、おう……すまん、みくびっていた俺が悪かった……かも?」


 そうだよな、こうやって異世界転移をしてきたエリカは、世界のバランスを回復するために己を捧げることを良しとする、選ばれしエリートなんだよな。


 高校時代に特に何をするでもなく遊んですごして、Fランに入るのがやっとで。

 しかも大学入った後も楽単ばっか取って勉強なんてろくにせず。


 なんとか面接に受かった中小企業にとりあえず就職したあげく、特にスキルを磨くでもなくのほほんと過ごし、10年後に会社が倒産して無職になって右往左往するアホで無計画な俺と違って、エリカはすっげー優秀な人間なんだ……。


「それにトールは気持ちよくありませんでしたか?」


「……気持ちよくって、なにがだよ?」


「わたしに知識マウントがとれて、トールは気持ちよくありませんでしたか?」


「おいこら」


「ふふふ、この世界の常識をわたしにパパっと説明するだけで圧倒的な知識マウントがとれてしまう……。どうです、とても気持ちよかったでしょう?」


「おいこらちょっと待てや」


「フランス語を習った上でフランス料理店に行ってヴォンジュールとか言わなくても、楽にマウント取れちゃいますからね。当たり前の常識で圧倒的な知識マウントを取る、人間これほど気持ちいことはないと思いますが」


「おまえ、そんなこと思ってたのかよ!? 人としての格差をまざまざと見せつけられて、ちょっと感傷入っちゃった俺の純情を返せよな!?」


「ふっふーん、こういった地道なヨイショが近い将来、結婚という形で大きな実を結ぶのですよ。千里の道も一歩から。幸せは歩いてこない、自分で手を伸ばして掴み取るものなんです」


「はぁ……。バレたヨイショほどダメなものはないと思うけどな」


「さっきも言いましたが、わたしはとても正直者だと自負しておりますのでここは敢えて明かしました。ですがトールが望むのなら、次からはバレないように上手くやりますのでそこはご安心を」


「会話が噛み合ってるようで噛み合ってない気がする……なんかちょっと俺、疲れてきたんだけど……」


 元気になったのマジで一瞬だったな……。


「おやおや、まだ朝も早い時間で起きたばかりだというのにお疲れとは、若いのにさぞ気苦労が多い生活をされてるんでしょうね。おいたわしいことです」


「誰のせいだと思ってるんだ?」


「大変申し訳ありませんが、この世界に来たばかりのわたしにはトールの気苦労相手は分かりかねますね」


「ああそうっすね……」


 くっ、異世界から来た美少女が、皮肉がまったく通じない超硬メンタル持ちの件に関して!



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