さらばアホ王子3
「こちらは殿下に婚約破棄をする代わりに私の要望を受け入れるという約束をしておりますのでその内容を認めてあります。こちらに殿下と陛下がサインをしたら婚約破棄の書類は提出してください」
婚約破棄だけして私の要望を受け入れませんなんて事になったら困っちゃうからね。
私が提示する内容としては難しい事は書いていない。
・これから先、リリアナ・グランデュールが婚約、結婚をする事があっても王家は干渉しない
・商会などを立ち上げる事があったも王家は妨害や干渉をしない
・王家はリリアナ・グランデュールに慰謝料を支払う
この三点だ。第二王子と婚約なんて事になったら私の領地に戻ってのんびりすることさえできなくなってしまうので、もう婚約結婚には口を出さない事を誓ってもらう。
「お父様お母様、私は少しの間…この騒動が収まるまで領地に戻ろうと思います。婚約破棄となった身ですのでもう結婚もできないでしょうし慰謝料をいただいてのんびりしますわ」
領地にはお父様の代わりにお兄様たちがいる。社交シーズンには王都にいてもシーズンが終わればまた領地に戻る。
お父様が宰相ということもあり両親と妹は王都にいるけれど。
「よし、慰謝料はこのお父様がふんだくってくるからな」
この父にこの娘ありって感じの言葉が返ってくる。
「リリアナ、あなたは私たちの自慢の娘なの。これで結婚が出来なくなるなんて思ってるかもしれないけどあなたはこの国の独身女性の中で一番身分の高い公女なの。明日からでも沢山の婚約の申し入れがあると思うわ」
なんと…
でも自由の身になった今また婚約決まった!ってなる前に少しでもやりたい事をしておかなくちゃ!!!
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両親との話を終えて部屋に戻ってさっそく荷造りを始めた。
「お嬢様、荷物にこんなにたくさんの白紙の紙を持っていく必要ありますか?」
「あったりまえじゃない!テティは領地へも来てくれるのだし教えておくわね?私はこの世界に娯楽の一つとして本を流行らすつもりなの」
あからさまにテティの頭の上に「?」が浮かんでいる。
「本…ですか。本ならばこの世にたくさんあるではないですか」
この世に本はたくさんある。確かにある。でも全て活字のいわゆる小説や伝記、歴史書などと言われるものだ。
「違うわよー!私が流行らせたいのは絵のみの本なの」
ガサゴソと荷物の中から一纏めにした紙の束を一つとりだしてテティに渡す。
「私が流行らせたいのはこういったものよ、読んでみなさい」
紅茶を二杯ほど飲み終わった頃。
「り、リリアナさまぁー…なんですかこれは…私涙が止まりません…男性同士の恋愛がこんなに悲しくも胸をときめかせるお話になっているなんて…
そしてこんな良いところで終わらせるなんて気になって夜も眠れなくなってしまいますよー…」
ズビズビっと鼻をすすりながらテティが凄い勢いで感想を述べ続けている。
ふっ…
やっぱり私の目に狂いはなかった!こっちの世界でもBLは女子たちにウケるわ。
「それにしても全てが絵で表されていて言葉が書かれているので絵が本当に話しているようで素晴らしいです」
「絵にする事でもっお話の中に入り込んで想像することができるでしょう?」
「はい!それにしてもリリアナ様はいつからこんなに絵がお上手だったんですか?全然しらなかったです」
「ま、まぁ、才能ってやつよ…おほほほ…」
さすがに前世の話をするわけにもいかないから適当にごまかすしかない。
でもこれで私がやりたい事が、夢が叶うかもしれない。
最低なクズのアホ王子ではあったけれど少しは感謝しなきゃだわね!
さらばアホ王子!これから私は強く逞しくいきていきますわ!