さらばアホ王子2
お昼になりお父様が帰ってきたと書斎に呼ばれ急いで向かって見れば、怒りすぎて疲れ切ったであろう顔をしたお父様がソファに沈んでいた。
「リリアナ来たか。昨日はあのアホ王子がすまなかったね」
お父様までアホ王子といってる。最早名前さえ呼ばれない残念なアホ王子。
「お父様こそお疲れ様でした。体調は大丈夫です?」
「あぁ、まったく血管が切れるかと思ったよ」
40代だというのに金髪金眼の美しいお父様。若い頃はお父様を取り合って女性たちが激しい戦いを繰り広げていたそう。この顔で公爵家長男なんて…その時代に生まれ変わってなくてよかったと心底思うわね。
ドアがノックされ、その後にお母様が入ってきた。銀髪碧眼のこれまた美しいお母様。
「リジー!会いたかった!」
入ってきたお母様を突然抱きしめるお父様。いつもの光景なのだが、お母様への愛が重たいお父様は抱きしめたお母様にすりすりしている。
「閣下、離してください」
氷点下の声。怒っている…お母様が怒っている。
「うぅ…閣下って怒ってるかい…?」
どう考えても怒ってるだろうよ!ってツッコミをしたいのをグッと堪えてお母様を宥めることを最優先にする。
「お母様、私は大丈夫です。本当はずっとあのアホ…あの殿下を愛する事が出来る気がしなかったので、肩の荷が降りたようで内心ホッとしています」
「母は王子殿下のことなどどうでもいいのです。あんな大勢の前で私たちの可愛いリリアナが侮辱されたのですよ」
綺麗な顔ほど怒った時の迫力がすごい…
「陛下とのお話はどうなったんでしょうか?いただいた手紙には婚約破棄は認められると書いてあったのですが」
「あぁ、もちろん婚約は破棄してもらう。こんな事があってまだリリアナを王家に渡すほど公爵家は落ちぶれていない。そして殿下の立太子が見送られることになった。今回の事で陛下は大変お怒りのため第二王子殿下とどちらが立太子とするか精査するそうだよ」
お父様が婚約破棄の書類を出したのでそれにサインをする。殿下のサインはもうしてあった。
まったく気の早い人だわね。こんな頭の悪い人が次の王様になるなんて恐ろしい。
第一王子のウィルソン殿下は剣の腕が立つが頭があまり切れる方ではない。その為にこんな騒ぎを起こしたのだ。第一王子派だった貴族も身の振り方を考えるはず。
2歳年下の第二王子のアダムス殿下はとても頭の切れる方で、所謂文武両道を地でいく方で人望も厚い。本人に次期国王になるという野望がないので兄を支えていくつもりだったらしい。
今回の事でダイアン国も政権争いがまた変わってくるだろう。
サインを書き終わり用意しておいた例の紙をお父様に渡す。