前世の私
私は前世での記憶があるのだ。
前世の私。
桜田梅子。日本に住む30歳の職業キャバ嬢だった。キャバ嬢と言っても近年のキャバクラは昔みたいに大金が飛び交うわけでもないからOLにちょっと色をつけた程度の稼ぎしかない。
それでもお酒を飲んだら飲んだだけお給料は高くなるならば飲むしかない!私には稼がなきゃいけない理由があったから…
彼氏やホストだったならばどれほど良かったか。私がお金を使う理由は【推し】である。いわゆるオタクだった私は、手っ取り早く稼げて尚且つ時間に余裕のある職業にてをだした。
ただ、この仕事とてつもなくストレスがたまる!
おじさんのニンニクくさい息で繰り出されるセクハラ攻撃に耐えながらいつでも笑い、お店の前で待ち伏せしてるお客さんをかわし、推しのグッズをもう一セット買いたくてシャンパンもう一本と甘えて煽り、喉が切れるまで飲んで吐いてを繰り返す日々。
【全ては推しの為】
そう思ってストレス耐性を体につける修行のような毎日だった。
どれだけしんどくても家に帰れば推しが待ってる。推しの同人誌を読み漁り、最終的には自分で二次創作本を自費出版するまでに至った。
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「終わったーー!!!!」
明日は同人誌のイベントへの出展を控えていた私は眠い目を擦りながらベッドになだれ込む。年末ということでいつもよりも仕事が忙しくて進みの悪かった原稿。
毎日酔って帰って来ては気絶するかのように眠り「ヤレバデキルコヤレバデキルコ…」と自分に暗示をかけながら毎日睡眠二時間で描き抜いた。
手には栄養ドリンクとビタミン剤の申し訳程度の体の労わりを経口補水液と共に入れつつ描き続けた。
描いてる間は辛くもないししんどくもない。ただただ自分の推しカップル達の幸せの結末のためだけに前を向くのだ。
時計をみたらまだ夕方の五時。寝る時間は充分にある!
「頑張ったんだから推し君たちの夢みせなさいよねー…」なんて独り言も早々に眠りに落ちたのだった。