つかのまのきゅうそく
ゲルダはブリジットによって火の里の長老のもとに案内されました。
「はじめまして、ゲルダと言います。カイという男の子をさがしているんです。それで、火の女神オンタケ様が何かを知っているかもしれないと聞きつけてこの赤の世界に来ました。どうか案内して下さいませんか?」
ゲルダは長老にオンタケのもとに案内してもらえないかたずねました。
「オンタケ様のもととな!?そこはこの里の者ですらおいそれと会わせてくれぬところぞ。なぜ彼女に会いたがる?」
長老はオンタケになぜ会いたがるのかたずねました。
「カイは、わたしのおさななじみです。わたしはカイをさがすためにふるさとをはなれました。カイに会えないままではわたし、死んでも死にきれません!どうかおねがいします、オンタケ様に会わせて下さい!」
ゲルダはオンタケに会う理由を必死になって話し、頭を下げて会わせてほしいと頼みました。
「じいちゃん…、うちからもたのむ…。ゲルダのねがいを聞き入れてほしいんだ…。うちもまだオンタケ様に会ったことがない…。でも…、ゲルダのおもいだけはむだにしてはいけない…、そうおもうんだ…。」
ブリジットもゲルダのために長老に頭を下げました。
「うむ…、しょうちした…。明日の朝出発いたす。今夜はここでブリジットと共にゆるりと休まれよ。」
長老は首をたてにふりました。
「ありがとうございます。」
「じいちゃん、ありがとう。」
ゲルダとブリジットは長老にかんしゃしました。
ブリジットといっしょにねどこについたゲルダでした。
「ゲルダ、あんたの住んでたところはどんなところだい?」
「わたしの故郷は…、白の世界のハンスヘイムの町で、真っ白い雪がふるさむいところです。」
「雪か…、うちのところはふらないな…。それから、カイという男の子について聞いていいかい?」
ブリジットはゲルダにカイについてたずねました。
「はい。カイはわたしと同い年のおさななじみでおとなりさんどうしです。ある日、バラの花に水やりをしていた時のことです…。とつぜん北の方から強い風が吹いてきました。カイはわたしをかばうように風上に立ちました…。」
「カイって心ある人なんだね…。」
「はい…、その時までは…。」
「その時までは…、ってことは今は…?」
「はい…、何かがカイの目に刺さってしばらくして…、カイはとつぜん『花はちった方が一番きれいなんだ』とバラの花をむしり取ってはちらして走り去りました。あの日からカイはいなくなってしまいました。わたしの知ってる心あるカイも…。」
ゲルダはブリジットにカイのことを話しました。
「そうか…、だからあんたはカイをさがしに…。」
「はい…。おばあさんから『心ない子は雪の女王によってはるか北の冷たい地に連れ去られる』という言い伝えを聞き、そこにカイがいると信じて北を目指しましたが…。」
「それで迷い込むようにここに来たんだね。」
「はい…。カイに関する手がかりがないかあちこちまわっていたところです…。」
「なるほどね…。いつかまた会えるといいね。」
「ブリジットさん、ありがとう…。」
そして二人はひとねいりしました。