ゲルダのたびだち
カイがいなくなって三日がたちました。ゲルダは家でおばあさんといっしょにだんろでだんをとっていました。
「おばあさん…、カイがいなくなってもう三日たつね。」
ゲルダはカイがいなくなってしんぱいでした。
「そうじゃのう…。あんなことするような子じゃなかったのに…。」
以前、ゲルダにカイの仕打ちを聞かされたおばあさんもカイの変わりざまが気になりました。
「おばあさん…、何か気になることない?昔の言い伝えのようなのでもいいから。」
ゲルダはおばあさんに気になることがないかたずねました。
「昔の言い伝え…!そうじゃ…。」
おばあさんはゲルダの『昔の言い伝え』に食いつきました。
「なになに…?おばあさん、わたしに聞かせて。」
ゲルダはおばあさんにさいそくしました。
「うむ…。わしが子供のころによく聞かされた言い伝えがあるのじゃ…。心ない行いをする子は『雪の女王』によってこのハンスヘイムよりはるか北のより冷たい地に連れ去られるという話じゃ…。」
おばあさんはゲルダに言い伝えについて話しました。
(まさか…、カイは雪の女王によって北に連れ去られたというの…?)
ゲルダははっとしました。
「おばあさん、ありがとう。」
ゲルダはおばあさんにお礼を言い、自分のへやに向かいました。
ねしずまった夜、カイをさがすためにひときれのパンとランプをつめこんだかばんをたずさえてゲルダは一人出かけました。はるか北の地平線にはオーロラがかがやいていました。後ろを振り返ると、たくさんの町の灯りが見えました。
(さようなら…、町のみんな…。わたしは必ずカイといっしょに町に戻ります…。今まで本当にありがとう…。)
ゲルダは故郷に別れを告げ、北を目指しました。
一夜明けた朝、おばあさんはゲルダのすがたを見ませんでした。おばあさんがゲルダのへやに入ると机に一通の手紙がおいてありました。おばあさんは手紙を読みました。
『おばあさん、ごめんなさい。わたしは、カイをさがしに行きます。カイとずっと会えないままではわたしは死んでも死にきれません。どうか、みんなにはないしょにして下さい。さいごに、今までわたしを育ててくれてありがとう。ゲルダ』
吹雪の中、ゲルダはひたすら歩いていましたが、進めば進むほど、さむくなっていきました。
(さむい…、さすが北ね…。でも…、わたしは…、あきらめない…。カイをさがし出すまでは…。)
ゲルダはあきらめず北を目指しつづけました。やがて、ゲルダは雪にうもれてしまいました。はたして、ゲルダはカイとふたたび会えるのでしょうか?