にじのとびら
ゲルダたちはイナバウアーと向かい合いました。
「小さな英雄よ、その様子だと、カイのきおくがもどったようですね。」
イナバウアーはゲルダがカイを連れだしているのを見てカイのきおくがもどったとさっしました。
「はい、イナバウアー様。カイのきおくはぶじにもどりました。しかし…、カイの右目が見えなくなったんです…。治るんでしょうか…?」
ゲルダはイナバウアーにカイのきおくがもどったと伝えると同時に、カイの右目が見えなくなるも治る見込みがあるのかをたずねました。イナバウアーは邪のかけらによって真っ黒くそまったカイの右目を見ました。
「…ざんねんですが…、もう…、手おくれです…。しかし…、あんずることはありません…。小さな英雄よ…、あなたがカイの右目となりなさい…。そしてさいごまで…、カイを支えるのです…。ビャッコやレイモンド…、そして心ある者たちと共に…。カイが…、もう二度と…、いつくしみの心を…、失うことのないように…。カイよ…、あなたの使命は…、さいごまで自分の業と向き合うことです…。」
イナバウアーはカイの右目が治る見込みがないと伝えると同時に、ゲルダにカイを支えること、カイに自分の業と向き合うよう伝えました。
「はい、イナバウアー様。カイのことはわたしたちにお任せ下さい。」
「このレイモンド、こころえました。」
「はい。」
ゲルダとレイモンドとカイはしょうちしました。ビャッコもうなずきました。
「小さな英雄よ…、カイよ…、あなたたちに氷の紋章をさずけます…。」
王座からたったイナバウアーは氷の槍で水色の氷の結晶の形をした紋章を生み出し、ゲルダとカイにさずけました。
「イナバウアー様、ありがとうございます。」
ゲルダとカイはかんしゃしました。間もなく、虹の紋章が光りだし、城のとびらも七色に光りだしました。
「さあ…、お別れの時です…。向こうの『虹のとびら』は…、あなたたちの故郷に通じています…。それでは…、あなたたちに氷のかごがありますように…。」
「イナバウアー様…、あなたにも…、虹のかごがありますように…。」
ゲルダはイナバウアーに、自分が一番強く受けているかごである虹のかごがあるようねがいました。
「ふふっ…、小さな英雄よ…、ありがとう…。」
イナバウアーはほほえみました。
「さあ…、おのおの方…、たっしゃでくらしなさい…。」
「イナバウアー様もお元気で…。」
ゲルダたちはイナバウアーと別れのあいさつをかわし、虹のとびらに入りました。
虹のとびらの向こうには、雪をかぶったハンスヘイムの町がありました。後ろをふりかえると、虹のとびらは消えていました。
「さあ、みんな、わたしたちの町よ。」
「ここがマスターとカイさんの故郷ですね…。マスター…、あらためてよろしくおねがいします…。」
「ありがとう、ゲルダ。こうしてもどれたのも君のおかげだよ。ビャッコ、お前もこの町でぼくたちといっしょにくらすんだよ。」
ゲルダが故郷をゆびさし、レイモンドはゲルダにあらためてよろしくと言いました。カイはゲルダにお礼をのべ、ビャッコに町で自分たちと共にくらすように言いました。カイに抱かれているビャッコはニャーとないてよろこびました。そしてゲルダは、カイをはじめ、レイモンドやビャッコと共に故郷にもどりました。
『雪の女王~世界をかける少女』をお読みいただきありがとうございました。
私は、アンデルセンの『雪の女王』がNHKでアニメ放送されたのをきっかけに自分でファンタジー小説を考えるようになり、色んなけいけんをへて、今年よりハイファンタジー群像劇シリーズ『レインボーボンズ&テール』を始めました。
そしてついに、『雪の女王×レインボーボンズ』を組み合わせたこの『雪の女王』リスペクト作品を書くにいたりました。
早い話、「ぼくのかんがえた『雪の女王』」丸出しですが…。
何はともあれお楽しみいただけたならうれしく思います。




