よこしまのかけら
「順を追ってお話ししましょう…。わたくしは…、このフィヨルヘイムに巣食う…、邪なる者どもとたたかっていました…。たたかいによってとびちった…、邪なる者のかけらの一つが…、南の方にとんでしまいました…。南には町がある…。町の者たちに何かあったら一大事…。わたくしはそのかけらをひろうべく…、南に向かいました…。そのかけらをさがしたところ…、カイなる少年の目にささっていました…。あのままだと…、カイは…、邪なる者と化し…、人々を手当たりしだいにおそっていたことでしょう…。そうならぬよう…、わたくしがほごして…、この城に連れてきました…。」
イナバウアーはゲルダにカイをほごしたいきさつを話しました。
「そうですか…。もう一つ聞きたいことがあります。カイが抱っこしていたあの猫は何でしょうか?」
ゲルダはカイが抱いていた猫も気になりました。
「あの猫は…、『フロストキャット』…。身体が氷でできており…、猫の姿をした氷の妖精です…。邪の力をかてとしています…。ゆえに、カイは何とか邪なる者と化さずにいられるのです…。」
イナバウアーはカイが何とかぶじなのはフロストキャットのおかげだとゲルダに話しました。
「わかりました…。わたし…、とてもかなしいんです…。カイが…、わたしや町のことをみんな忘れてしまったのが…。カイのきおくを取りもどすことは…、できないのでしょうか…?」
ゲルダはイナバウアーにカイのきおくを取りもどせないかたずねました。
「…そうですね…、取りもどせるかどうかは別にして…、本人のかこにふれないようにせっしていきましょう…。そう…、一からきずなをはぐくみ直すのです…。わたくしから言えることは…、このくらいです…。」
イナバウアーはきおくがもどるもどらないは別に、一からきずなをはぐくみ直すのが一番と語りました。
「イナバウアー様、ありがとうございます!」
ゲルダはイナバウアーに一礼するとカイのいる部屋にもどりました。




