ぜつぼうのゲルダ
城の中にある小さな部屋で、カイは猫を抱っこしていました。猫の首には氷の結晶のマークのくびわをつけられ、身体もカイの服と同じ真っ白です。
「『ビャッコ』、いつ見てもお前はかわいいな。」
カイに抱っこされたビャッコもうれしくニャーとなきました。カイがビャッコとたわむれている中、部屋にゲルダがやってきました。
「カイ!」
ゲルダはついにさがしていたカイを見つけ、彼の名をさけびました。
「…君はだれ…?ぼく…、君のこと全然知らないんだけど…。」
カイはゲルダに関するきおくを失っていました。そんなカイにゲルダはどうようしました。
「わたしよ、ゲルダよ!ほら、ハンスヘイムの町の…!」
ゲルダは必死になってカイにうったえました。
「ゲルダ…?ハンスヘイムの町…?知らないね…。」
カイはゲルダだけでなく、自分の故郷に関するきおくも失っていました。
「そんな…。」
ゲルダはインドラからカイがきおくを失っていると聞いてかくごをしていたはずが、じっさいに直面して大いにどうようしました。
(でも…、わたしはあきらめない…。この虹の目薬で…、カイを救ってみせる!)
気をとり直したゲルダはきおくを失ったカイをすくうため、かばんから虹の目薬を取り出しました。
「目薬をさすからじっとしててね…。」
ゲルダは虹の目薬をカイの右目にさそうとすると、
「ほっといてくれ!!」
何とカイはどなっては、ゲルダをふりはらってていこうしたのです。そのはずみでゲルダは虹の目薬をおとし、虹の目薬の入ったびんは割れてしまいました。
(そんな…。)
カイを救うための虹の目薬を、本人にていこうされる形で失ったショックのあまり、ゲルダは何も言わずにカイのいる部屋をしずかに去りました。
ゲルダはろうかで一人泣いていました。
(カイを救うための…、虹の目薬を…、失ってしまった…。わたし…、カイを…、救うことが…、できなくて…。おばあさん…、町のみんな…、スノボックルたち…、レイモンド…、デュラ様…、ブリジット…、火の里のみんな…、オンタケ様…、ガイア様…、ホルガー…、クレア様…、インドラ様…、バニット…、ジェライムたち…、グウレイア様…、マチルダ様…、ごめんなさい…。みんなのおかげで…、カイのもとに来れたのに…。)
ゲルダがぜつぼうしている中、一人の女性の声がしました。
「『小さな英雄』よ、大丈夫ですか?」
「はい…。」
はっとしたゲルダがなみだをぬぐって声のする方に向いてみると、イナバウアーとレイモンドがいました。
「申しおくれました。わたくしは『雪の女王イナバウアー』。あなたのあいぼう、レイモンドから話はうかがっております。何でもわたくしがほごしたカイをさがしていらっしゃるとのことですね?」
「はい…。イナバウアー様…、カイをほごしたいきさつについて話してもらえませんか…?」
ゲルダはイナバウアーにカイをほごしたいきさつについて話してもらえないかたずねました。
「わかりました…。」
イナバウアーはしょうだくしました。




