きょじんホルガー
黄の世界はさばくの世界で、ゲルダの故郷とは正反対です。ホルガーはゲルダとブリジットを抱きかかえながらさばくをすべるように進みました。しかし、そんな一行を予期せぬひげきがおそうのです。
「マスター…、この世界の女神は…、もうすぐだ…。」
「ありがとう。それにしてもさばくはあついわね…。あなたがいなければわたしたちどうなっていたことか…。」
「ああ…、あついのはなれたつもりなんだが…、赤の世界よりあつい世界があるとはね…。」
ゲルダもブリジットもさばくのあつさにこたえていました。もうすぐ一行は黄の世界の女神にあえるとおもったその時でした。
「あれ!?全然進んでないよ。」
ブリジットはホルガーが全然進んでいないことに気づきました。
「それどころかわたしたち…、下に沈んでない!?」
「どれどれ…!…ホルガーの足がすなに…!」
ゲルダたちがホルガーの足元を見ると、ホルガーの足がすなにうまりはじめていました。ホルガーはさばくのうずに足をとられていたのです。このままではみんなすなにしずんでしまいます。
「マスター…、そなたらをうずからはなそう…。」
そこでホルガーはゲルダとブリジットをうずの外にはなしました。
「ホルガー!」
「ゲルダ、行こう!」
「いやよ!せっかくいっしょになれたのに!こんな別れなんてわたしいや!」
「そりゃうちだっていやだよ!…やっぱ大切な存在との別れはな…。とにかく今は自分の命のことだけ考えな!」
ゲルダはしずんでいくホルガーを助けようとました。しかし、ブリジットに止められました。
「マスター…、このホルガー…、みなをまもれて幸せだった…。どうかみなに…、土のかごを…。」
ホルガーはゲルダたちに敬礼しながらさばくのうずにしずんでしまいました。
「ホルガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
ホルガーが完全にしずんでいったのを見て、ゲルダはさけびました。
ホルガーを失った二人はかなしみにくれました。
「…ホルガー…、ごめんね…。わたし…、あなたを…、まもれなかった…。」
ゲルダはなみだを流しました。ブリジットもしずかになみだを流しました。
「やはり…、大切な存在との別れほどつらいことはないね…。…ところでだが…、ゲルダは…、すなにしずむ直前のホルガーのかおを良く見たかい…?」
ブリジットも大切な存在との別れはつらいと感じました。また、ブリジットはすなにしずむ直前のホルガーのかおについてゲルダにたずねました。
「…いいえ…。」
ゲルダはホルガーを失ってしまうことを気にしていたあまり、すなにしずむ直前のホルガーがどんなかおだったのか見ていませんでした。
「…笑ってたよ…。みんなをまもれて幸せだったって…。身体がしずみきるまでうちらに土のかごがあるようねがってた…。」
ブリジットはホルガーが幸せだということをゲルダに伝えました。
「全然幸せなんかじゃない!だってすぐにしずんだんだもん!それのどこが幸せっていうの!明らかに不幸じゃないの!」
ゲルダはホルガーは決して幸せじゃなかったと言い返しました。
「幸せだったさ!…たしかにのぞまぬ形だったが、大切な人たちをまもれたんだからな。…あんたが今すべきことは…、ホルガーのぎせいをむだにしないことだよ!カイというかけがえのない友を救うのがあんたの使命じゃないか!」
ブリジットはゲルダにホルガーのぎせいをむだにしてはいけないとうったえました。
「…そうね…、あなたの言うとおりだわ…。わたし…、大切なこと忘れてた…。ごめんなさい…、ブリジット…。そして…、ありがとう…。」
ブリジットはゲルダを抱きました。ゲルダはブリジットのむねで泣きました。ゲルダを抱いたブリジットも涙を流しました。
ホルガーを失ったかなしみをこえ、二人は黄の世界の女神のいるしんでんに何とかぶじにたどり着きました。




