いなくなったカイ
アンデルセンの名作童話『雪の女王』を自作ハイファンタジー群像劇シリーズ『レインボーボンズ&テール』の舞台『世界塔ブルドラシル』で表現しました。
原作の流れをそのままに原作とのいろんなちがいをぜひお楽しみ下さい。
雪の世界『白の世界』の『ハンスヘイム』の町の中、同い年でおさななじみかつ、おとなりどうしの12才の白い服の少年『カイ』と黄色い服の少女『ゲルダ』はバラの花に水やりをしていました。しかし、そんなひとときがとつぜん台なしになることを二人はまだ知りません。間もなく、二人の方に北から強い風が吹いてきました。カイはゲルダをかばうように風上に立ちました。そして、カイの右目に真っ黒い何かがささりました。
「うっ…、目が…。」
「カイ、だいじょうぶ?」
ゲルダはカイのことを気にかけました。しかし、カイは何もこたえません。しばらくして、カイはとつぜんバラの花をむしり取って花びらをちらしました。
「カイ!何をするの!」
「ふん!花なんてちった方が一番きれいなんだよ!」
「そんなことするなんて、わたしの知ってるカイじゃないよ!」
「うるさい!!」
カイはゲルダにうるさいと言いはなち走り去りました。
(カイ…、どうして…。)
カイの心ない行いにゲルダは泣き出しました。
カイが一人で町の外に出たとき、白い槍をたずさえ、白いよろいかぶとに身を包んだ一人の美しい女性騎士があらわれました。女性騎士の左胸には氷の紋章がほどこされています。
「…見つけました…、少年よ…。」
女性騎士はカイを見て見つけたといいました。
「『見つけました少年』って…、ぼくには『カイ』っていうりっぱな名前があるんだよ!」
カイは女性騎士にどなりました。女性騎士は何もこたえずカイに歩みよりました。
「おい、人の話聞いてんのか!!」
カイは無視されたことにさらにいかりました。女性騎士が槍をカイのひたいに向けると、カイの動きが止まりました。
「カイ…邪のかけらによりいつくしみの心をうばわれし少年よ。この『雪の戦乙女イナバウアー』と共に冷たくもおだやかなる地にまいりましょう。『氷の槍』よ、この者の動きを止めよ!」
イナバウアーは氷の槍でカイを眠らせ、抱きかかえて北へとび去っていきました。